Blender 5.2 LTSでは、ビデオ編集(VSE:Video Sequence Editor)にも多くの改善が追加されました。
特に大きな変更は、コンポジター機能との統合強化です。VSE内でコンポジターノードを直接利用できるようになり、より高度な映像編集やエフェクト処理が可能になりました。
個人的に便利だと思った機能に焦点をあてつつまとめています。
Compositorエフェクトストリップ(VSE内でコンポジターを使用)
新しく 「Compositor」エフェクトストリップ が追加されました。
これは、コンポジターノードツリーを利用して処理を行う特殊なエフェクトストリップです。
動画Aから動画Bへのトランジションを作ることなどに使えます。
例えば動画Aと動画Bのストリップ両方を選択し、
Add > Compositorで追加します。重なった幅にストリップが出現します。
コンポジタのエディタをシーケンサーモードで出して、Newを押すとGroup Inputノードが追加されて、選択したストリップが出力されている状態になっています。
Group Input出力
- Input1…下側のストリップ(遷移前)
- Input2…上側のストリップ(遷移後)
- Effect Fader…0~1までの変化する値
この出力を使ってオリジナルのトランジションエフェクトを作ることができます。Float Curveノードをはさめば遷移のタイミングも好きに変えることができます。
ストリッププロパティにDefault Fadeというチェックがありますが、これを外すと0~1のタイミングをキーフレームでアニメーションできます。
これにより、
- 独自のトランジション
- 複雑なカラー処理
- グローやブラーなどの高度なエフェクト
などをVSE上で作成できます。

右の記事でオリジナルのトランジションの紹介など、詳細に書いています。
※「Compositor」エフェクトストリップは、以下で説明する、ストリップに追加する「Compositor」モディファイアとは異なる新機能です。
Compositor Modifierの機能が強化
VSEのストリップに追加できるモディファイアとしてのコンポジットの機能が強化されました。
ほぼジオメトリノードと同様に使えるようになってきています。
- Compositor Modifierの入力機能が強化
ストリップにコンポジタをシーケンスモードで追加したとき、Group Inputにノードの入力とつなげると、モディファイアからパラメータを入力できるようになります。 - コンポジターノードアセットをVSEから追加可能に
コンポジターノードツリーをアセット化し、VSEのストリップモディファイアとして利用できます。ノードツリーの Usages(使用用途) で、Strip Modifierを有効にすると、VSEの追加メニューから自作モディファイアとして利用できます。 - ノードグループ選択欄を非表示可能に
モディファイアの名前の右の下向き矢印アイコンを開き、Show Node Groupを無効にするとノードグループを隠して、公式のモディファイアっぽいUIにすることができます。

オリジナルのコンポジターモディファイアを作っておけば、よく使うエフェクトをいろいろなストリップに簡単に追加でき、ストリップごとにパラメータを調整して使い分けることができます。
とても便利な機能なので、今後は多くの人が活用するようになりそうです。アセットとして便利なカスタムエフェクトもたくさん公開されそうですし、面白い表現を気軽に試せるようになるのが楽しみですね。
Strip Modifier(ストリップモディファイア)の改善
他にもモディファイア周りのUIが変更されていたり、機能が追加されています。
- モディファイアメニュー追加
モディファイア右の下向き矢印からメニューを開きます。
できること:- モディファイア複製(Shift+D)
- 選択したストリップへコピー
- スタックの先頭・最後へ移動
- プレビュー表示切替追加
プレビュー表示ON/OFF(ディスプレイアイコン)が追加されました。 - Linear Modifiers削除
リニアカラー空間で計算するためのオプションであるLinear Modifiers設定が削除されました。
Timeline(タイムライン)の追加機能
- スクラブバー追加(Scrubbing Region)
VSE再生コントロール部分に、スクラブ領域が追加されました。- Playback > Scrubbing Regionにチェックするとスクラブバーが表示されます。シーケンサーやプレビュー画面で使えて便利です。
- ストリップサムネイル表示変更
5.2では初期設定で、ストリップ開始位置とストリップ終了位置のみにサムネイルが表示されます。(以前は全てのサムネが表示され、重いとBlenderが強制終了したりしてました。)シーケンサー右上のシーケンサーオーバーレイ(Sequencer Overlays)から以下が選択できます。- None…サムネ表示なし
- Strip Ends…最初と最後のみ表示(デフォルト)
- Continuous…全て表示

- Prefetch(先読み)の改善
動画編集時のキャッシュ処理が改善されました。
以前:再生位置より後ろのフレームを先読み→5.2:再生位置より前5フレームも先読み
するようになりました。これにより、少し前のフレームへ戻る操作が高速になります。
プレビュー画面の追加機能
- Composition Guides(構図)ガイド
VSEプレビューにComposition Guides(構図ガイド)が追加されました。カメラと同じような構図のガイド線を利用できます- プレビュー画面右タブのView > Composition Guides
- Image Origin(画像原点)のスナップ強化
画像ストリップのOrigin位置に、新しいスナップ項目が追加されました。(やってみましたが5.1と違いがよくわかりませんでした…)- 上部メニューImage > Move Originで原点をいろんな場所にスナップできます。

原点位置を変えることで回転基準位置を簡単に変更できます。
Text Strip(テキストストリップ)の改善
テキストの行間調整機能追加
テキストストリップで行間を調整できるようになりました。
- Line Spacing
フォントサイズ基準で行間を調整できます。右のアイコンを押すとピクセル固定で調整できます。 - ちなみに入力欄を広げることもでき、文字数の多いテキストも見やすく入力できるようになりました。
テキストスタイルプリセット追加
テキストストリップにスタイルプリセットが追加されました。
標準で以下の3種類があります。
- Subtitles(字幕)
- Main Title(メインタイトル)
- Corner Title(画面隅タイトル)
フォントや配置などの設定を保存し、簡単に再利用できます。

オリジナルプリセット登録について
アウトラインやBOXなどの装飾、Location X, Y, Alignmentなどを設定してからプリセットの名前をつけて右の+ボタンを押すと簡単に登録できます。
Scene Strip(シーンストリップ)の改善
View Layer選択対応
Scene Stripで使用するView Layerを選択できるようになりました。
背景を分離して、そこにテキストストリップを挟めたり、編集の自由度が広がっています。
※初期状態ではデフォルトのView Layerが選択されます。
Workbench背景設定の上書き
WorkbenchのWorld設定をScene Strip側で変更できます。
プレビュー画面右タブView > Scene Strip Display > Override Render Settingsにチェックをすると編集シーンのワールド設定のViewport Displayが上書きされます。
複数のScene Stripで背景色を統一したい場合に便利です。

- Sceneが存在しない場合の表示改善
編集用Sceneしか存在しない場合、追加メニューに「No other scenes.」と表示されるようになりました。
その他の改善
その他の改善についてはリリースノートを参考にしています。
- 動画読み込み改善
動画ファイル読み込み時に、すべての音声・映像ストリームを正しく追加できるようになりました。 - Render Audio改善
「Render Audio」実行時に、進行状況バー表示、キャンセル可能になりました。 - Color Stripサイズをピクセル指定可能
Color Stripのサイズを、Strip Properties → Transformからピクセル単位で指定できます。
VSEのコンポジター処理がGPU対応
コンポジターモディファイアやエフェクトがGPUアクセラレーションに対応しました。
設定場所:
Render Properties(レンダープロパティ)
> Performance(パフォーマンス)
> Compositor
から実行デバイスを変更できます。
※GPU処理されるのは個々のコンポジター処理部分のみです。結果はCPUメモリとの間で転送されます。
Scopes(スコープ)のHDR対応
VSEのScopesがHDR・Wide Gamutカラーに対応しました。
対応内容:
- HDR表示
- Logスケール表示
- nits単位のグリッド表示
- P3 / Rec.2020色域対応
- 色域外カラー表示改善
HDR映像編集時の確認がより正確になります。
パフォーマンス改善
- カラー変換処理の最適化
映像やコンポジターモディファイア結果をSequencer Color Spaceへ変換する処理が改善されました。以前:処理直後に変換→5.2:必要な時だけ変換になりました。不要なカラー変換を減らすことで高速化しています。- ただし、スケール変更や回転を行うストリップでは、現在のカラー空間でフィルタリングされるため、見た目が少し変化する場合があります。
- 特にEXRなどLinearカラーでは、5.2の結果のほうが自然になる場合があります。
- 透明処理の高速化
Compositor Modifierが結果の透明状態を自動判定するようになりました。完全不透明なストリップでは高速な処理経路を利用できます。 - Mask入力高速化
Maskデータブロックの処理速度が改善されました。特にCompositor Strip Modifierで効果があります。
Python API変更
- 追加:strips.connections
指定したストリップに接続されているストリップ一覧を取得できます。
また、- strips.new_movie
- strips.new_sound
- にstream指定が追加されました。動画ファイル内の特定ストリームを選択して読み込めます。
互換性変更
- Mask入力の挙動変更
- 5.1以前:マスク未指定の場合→ 黒 + 完全透明
- 5.2:マスク未指定の場合→ 黒 + 完全不透明になりました。
- EXR透明部分の色処理改善
半透明画像のカラー変換処理がCompositorと一致するようになりました。これにより、Glow、Emission、EXR素材などで発生していたエッジのアーティファクトが改善されています。 - Movie StripのTimecode削除
Movie Stripの「Timecode files」機能が削除されました。現在はProxy作成時にProxyのみ生成され、タイムコードファイル(.blen_tc)は作成されません。
まとめ
Blender 5.2 LTSのVSEアップデートでは、単なる動画編集機能の改善だけではなく、
- VSEとCompositorの統合
- カスタムエフェクト作成強化
- 字幕・タイトル制作機能改善
- シーンストリップのビューレイヤー選択が可能に
など、より本格的な映像制作ツールへ進化しています。
特にコンポジターノードをVSEのエフェクトとして利用できるようになった点は大きく、Blenderだけで高度な映像編集を完結させたいユーザーにとって重要なアップデートです。
参考
新機能について以下の動画を参考にさせていただきました。
関連記事
細かい使い方については古いバージョンですが以下の記事もあります。UIなどの場所が変わっていますが基本的な機能は使えます。
シーンの作成方法などについては以下の記事で解説しています。
Post Processingパイプラインについては以下の記事で解説しています。






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