アニメの中で煙や埃を表現するために物理的な特性をまとめて、2Dでアニメーションするポイントなどをまとめています。
まず煙とは何か
厳密には煙は気体そのものではありません。
煙は、
- 空気
- 水蒸気
- 微細な液滴
- 燃焼で発生した固体粒子(すす)
の混合物です。
例:
- タバコの煙 → すす粒子が多い
- 焚き火の煙 → 水蒸気+すす
- ドライアイスの白いモヤ → 水滴(煙ではない)

※砂埃、ドライアイスなどは煙ではないですが、煙と似たような動きをするので同じカテゴリで解説しています。
煙の色
煙は、気体そのものは透明で、見えているのは中の粒子です。
光が粒子(中の微粒子(エアロゾル))に当たると、散乱・反射が起きます。
粒子のサイズが「可視光の波長(だいたい0.4〜0.7μm)」と同程度以上のとき起きるのが ミー散乱(Mie scattering)です。
ミー散乱では:
赤・青・緑などの波長差があまり区別されずほぼ全部の波長が同じように散乱されます。
→ その結果「白っぽく」見えます。
だから
- 雲(微小な水滴)
- 湯気(凝結した水滴)
- ドライアイスの霧(凝結した水滴)
- 白煙(燃焼生成物+水分)
は白〜灰白になります。
逆に煤(すす)・ディーゼル排気みたいに粒子が黒いと、光を吸収する性質が強い(散乱より吸収が勝つ)ので黒煙になります。
煙の動き
炎から出た煙など、ほとんどは上昇します。
- 燃焼すると周囲の空気より温度が高くなります。
- 温度が高い空気は密度が低くなります。
- 密度差により浮力が生じ、その結果として上昇気流(対流)が形成される
通常は微細な粒子でも重力が働くので物質は落ちていきますが、温度が高いと空気に上昇の熱対流ができるので、その流れにのって微粒子は上昇していきます。つまり
- 熱い空気 → 上昇
- 冷たい空気 → 下降
なので、炎からの煙、湯気は上昇しますが、ドライアイス、砂埃は下降します。(※ドライアイス・砂埃は煙ではありませんが、同じような流体です。)
煙の形
煙の形には直線や曲線的に進む形と、もこもこした形などの違いがありますが、どうしてこのような違いができるのでしょうか?
まず、煙や砂埃、ドライアイスなどは気体に微粒子が乗った、流れのある流体です。
流体には、層流と乱流という流れの違いがあります。
空気の流れがそろって一定の方向に進んでいると層流
空気の流れの向きや速さが場所ごとにそろっていないと乱流になります。
- 層流(そうりゅう)
- 流れが比較的真っすぐで整っている状態。
- 例:お線香などの煙の根本がまっすぐあがっているような状態
- 乱流(らんりゅう)
- 流れが不安定になった状態。渦が大量に発生します。
- 例:爆発の後にもこもこした煙が現れるような状態。お線香のまっすぐだった煙がだんだん形を変えてぐちゃぐちゃになっていく状態です。
なぜ渦のような形ができるのか
煙は上昇する途中で、流れの速度差によって境界が揺らぎ、その揺らぎが成長して波のような形になります。この現象は Kelvin–Helmholtz instability(ケルビン・ヘルムホルツ不安定性)として知られています。
右のシミュレーションアニメを見るとわかりやすいと思います。
これは渦ができる要因の一部ですが、流体では様々な条件で渦のような動き、形が発生します。
線香を観察するとよく分かります。
根元は真っ直ぐですが、少し上で徐々に揺らぎが目立つようになり、グニャグニャになります。
あれは層流が徐々に不安定になり、乱流へと遷移していく過程です。この中で、回転したり、渦を巻くような形も現れることがあります。
煙の形がモコモコになる理由
煙は流体の動きを可視化しており、空気の流れの中で渦構造が生まれます。
その中では大小さまざまな回転運動が同時に存在し、煙はそれに沿って引き伸ばされたり巻き込まれたりします。
その結果、カリフラワーのような複雑な形になります。
このモコモコは、異なるスケールの渦構造が重なってできた形です。
煙のアニメーション
❶線香などの煙
比較的安定した状態で静かに出ている煙は線のような形で出て上部で乱れ始めます。
ジオメトリノードなどを使って波のように送ったりノイズ・渦巻効果を加えていくことで表現できます。
❷❸❹❺小さな煙・砂埃
❷は球が集まったような形にデフォルメしたもの。最後はイーズアウトで細かい球に分解しながらほんの少しずつ上昇して消えます。(特に砂埃の場合は上昇気流ができているわけでもないので、最後はあまり上に上がりません)
❸CやS字のような形が出るように分解されて消えていくもの。消えていく方向の形が少しずつ残って消えていくような感じ
❹透明度を上げていって消していくもの。
煙は透明度が消えていくような形でも表現できます。❷とか❸とか煙のアニメーションの透明度を上げていくような表現もある
❺若干渦を巻きながら消えていく煙。少し実際の物理やリアルな煙の形が見えるようになります。
❻中規模の煙
火事などの煙。塊を意識してそれが大きく成長していく感じ。そのとき、凸凹の山が巻かれるように送っていきます。
➐大規模な煙
噴火とか爆発時の煙。ブロッコリーのような塊が内側に巻かれながらもこもこと成長していきます。スケールが大きいとほぼ動かないほど遅いときもあります。
内側に巻きながらほんの少しずつ大きくなるという遷移がわかりにくいときはちょっとした凹凸や線や隙間などを効果的に送っていくといいかなと思いました。

下動画はジオメトリノードなどを使って作った煙です。
黒煙のリファレンス動画です。
煙はかなり自由に形を変えるので、アニメーションする際の自由度も高いです。好きなアレンジを楽しめます。









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