水は身近な存在ですが、雨粒、水滴、川、海など、その量や状況によってまったく異なる動きを見せます。
この記事では、液体としての基本的な性質を整理し、アニメーション制作に活かせる考え方をまとめます。
水にどのような力が働いているのかを理解すると、動きに説得力を持たせやすくなります。物理法則を完全に再現することが目的ではなく、自然な動きを考えるための指針として活用することが目的です。
基本的な原理を理解しておくと、デフォルメや誇張表現を加える場合でも意図的にコントロールしやすくなり、より自由なアニメーション表現につながります。
水・液体にある性質
水には
- 凝集力(Cohesion)…水分子同士が引き合い、1つにまとまろうとする力
があります。
また、この性質によって表面張力も生まれ、水はできるだけ表面積の小さい形、つまり球形に近い形を保とうとします。
しかし実際には、重力や慣性、衝突による力などが加わるため、水は伸びたり、ちぎれたり、分裂したりしながら形を変化させます。
例えば滝では、水が高速で落下し流れが乱れるため、滝つぼ付近で細かな水滴へと分裂します。さらに細かくなると霧のような状態になり、ひとつの塊としてまとまることができません。
反対に、水の流れが穏やかな場合は凝集力や表面張力の影響が強く現れ、水滴は丸く、水面は滑らかになります。
- 丸い水滴 = エネルギーが低い・安定した状態
- しぶきや霧 = エネルギーが高い・不安定な状態
もちろん実際の水の動きはもっと複雑ですが、水の形は
「動きのエネルギー」
と
「まとまろうとする力(凝集力・表面張力)」
のどちらが優勢かによって大きく変化すると考えると、アニメーションの判断がしやすくなります。
あまり動かないときの水・水滴
まとまりたいし、ひっつきたい
静止しているときや、あまり激しく動いていないとき、液体には凝集力や付着力の影響が強く現れます。
凝集力(Cohesion)
これは水分子同士が引き合い、1つにまとまろうとする力です。
凝集力によって、水面では表面積をできるだけ小さくしようとする表面張力が働きます。
そのため、無重力状態では水がほぼ完全な球形になったり、コップの水面が少し盛り上がった状態を保ったりします。
付着力(Adhesion)
水は周囲の物質にもくっつこうとします。
例えば、水をグラスから注ぐとき、水がグラスの表面に沿って流れてしまうことがあります。
また、毛細管現象では、付着力と凝集力によって、水が細い管をのぼっていきます。
だから、あまり激しく動いていない液体は、何かに付着しながら、表面張力によって丸みのある滑らかな形状を保つことが多いです。
少し振動や揺れがあっても、凝集力や表面張力によって、できるだけまとまった形を維持しようとします。

動きのポイント
あまり激しく動いていない液体では、凝集力・付着力・重力がせめぎ合いながら、落ちるか落ちないか、分裂するかしないかなどが決まっています。
例えば、蛇口からゆっくり水滴が落ちるとき、最初は表面張力によって球形を保とうとします。
しかし、水滴が大きくなるにつれて重力の影響が強くなり、だんだんしずく状に引き伸ばされていきます。
粘性が高い液体は長く伸びやすく、低い液体は途中でちぎれて分裂しやすくなります。
分離した水滴は再び表面張力によって丸い形に近づき、蛇口側の水は付着力や表面張力によって上側へ引き戻されます。
落下中の水滴も、重力や空気抵抗の影響を受けながら、伸びたり縮んだりして揺れ続けています。
※液体はどのくらい粘性があるかによって、形がちぎれやすいかどうかが決まる

動画チュートリアル。どこで凝集力、付着力が働いてるか何となく図示しているので、テキストじゃわからんって方は見てみてください。
水滴落下の実写リファレンス
水しぶき
落ちた水滴や雨、石などが水面に落ちたときに水しぶきがあがります。
小さな水滴の場合は王冠型に水しぶきがあがり、ウォータークラウンなどとも呼ばれます
水しぶきが出来る大体の過程
衝突の圧力で水が横と上に押し出され、外側は王冠状に立ち上がり、中央は水柱として跳ね上がり、同時に波紋が円形に広がり、最終的に水のリングは表面張力の限界で分裂して水滴になる。
① 水しぶきがあがる
落下 → 圧力が一点に入る→圧力が逃げる → 横と上に広がる
水滴や石が落ちると、その場所に強い圧力がかかり水面を押しますが、それ以上、下にいけないときは圧力は周囲に広がります。
- 横方向:水が外へ広がる
- 上方向:押し返しで持ち上がる
外へ広がった水がリング状に立ち上がり、表面張力で薄膜ができます。
威力が小さい場合、水滴が何か所か上の方へ昇ってきて王冠のような形になります。
そのままの勢いで水滴がちぎれて王冠から離れることもあります。
上方へリングが上がりきるとスピードが落ち、今度は重力で下方向へ加速します。このときふわっと滞空したような遅さが必要になります。
②崩壊
時間が経つと外側のリングが不安定になり、薄膜に穴が空いて、それが広がり、パーツが細くなったり水滴に分裂していきます。(作画的にはちぎれて細くなって微妙につながったりした形が出てくるのがポイント)
横方向に(円の外側に)広がりながら分裂していく。さらに放物線を描くように落下する
離れた水滴も放物線を描いて落下していく
③波紋が広がる
衝突の圧力は水面全体にも伝わり、
円形の波紋として外側へ広がる。
④中央から柱が上がる
押し込まれた中心は反動で戻ろうとして、
細い水の柱(ジェット)として上に伸びる。
水が上の方に集まってきて、ちぎれて水滴になってまた落ちてくる。
さらに波紋や柱が伸びる場合もある

リファレンス動画
右側は、ウォータークラウンが発生するときの実写リファレンスです。
実際のウォータークラウンを観察すると、水の薄い膜が真下や内側へ落ちていくことがあります。しかしアニメーションでは、見た目の気持ちよさや動きの分かりやすさを優先して、外側へ広がるように表現されることがよくあります。
また、リング状の部分から飛び出す水滴も、現実ではそれほど大きく動かない場合があります。それに対してアニメーションでは、誇張表現として大きな放物線を描かせたり、高く跳ね上げたりすることが少なくありません。
こうした表現の違いを考えるためには、まず水にどのような力が働いているのかを知ることが大切です。物理的な仕組みを理解していると、「どこを誇張するか」「どこを省略するか」を意識的に選べるようになります。
逆に言えば、基本的な力の働きを理解していれば、現実そのままではなくても存在感のあるデフォルメが可能になります。自分にとって気持ちの良い動きや魅力的な表現を作りやすくなるはずです。
「自分の描く水滴はやたら跳ねるんだ!」というような個性も、その上で自由に加えることができます。ぜひ自分が納得できる、好きな水の表現を探してみてください。
大きな水しぶき
大きな水しぶきも、基本的な生成過程は小さな水しぶきと共通しています。しかし、働く力の大きさが異なるため見た目は大きく変化します。
強い衝突では慣性や圧力が表面張力よりも支配的になるため、水は一気に押し上げられます。その結果、ウォータークラウンのような整ったリングは形成されにくく、一部だけが不規則に盛り上がったり、途中でちぎれたりしながら崩れていきます。
また、持ち上がった薄い水膜もすぐに不安定となり、分裂や衝突を繰り返しながら細かな飛沫へと変化します。さらに空気を巻き込むことで泡が発生し、多数の水滴や泡が光を乱反射するため、白く濁った水しぶきとして見えるようになります。
水面でも、小さな水滴のような規則的な波紋ではなく、白波のような乱れた波が広がることが多くなります。
①水しぶきがあがる
かなり強い圧力が水面を押して、その跳ね返りで上と横方向にでかい圧力がかかって大きな水しぶきが上がります。
作画のポイント
上方向への力が強いときはとがったような形多め
滞空して、崩壊するときは、上への速度があまりないので、形を丸みを帯びるようにすると、スピード感を表現できます。
②崩壊
水しぶきが崩壊するとき、デフォルメして、結構大きな塊のまま崩壊させています。
内側から穴が空いてパーツが細く小さくなって、最後は粒状になって落ちる感じです。
③波紋が広がる・崩壊
大きい水しぶきのとき、水面の波紋は泡が多めになるので白波が立ちます。
白波は広がるとともに、内部から穴が空いて崩壊していくような動き。(泡はそんなに素早く崩壊しないときもある)
④中央から柱が上がる
岩などが落ちたとき、その揺り戻しで最初にできたしぶきより高いしぶきがあがることも多いです。
これも①からの流れと同様にしぶきが崩壊して落下し、また水面に白波の波紋を作ります。

描いて見て思ったのは、しぶきがあがったときにふわっと滞空する動きがあると気持ちが良いので、一番しぶきが上がった部分を気持ち1枚多めで描くとちょうどいいと思いました。
また、大きい水しぶきは複雑になるため、デフォルメするときは
- エネルギーが大きい…運動方向がある→とがった形
- エネルギーが小さい…凝集力優位→丸みのある形
を意識するといいんじゃないかと思いました。(これは好みもある気がして…ディズニーはずっと丸みがあるし、日本アニメだとずっととがってるイメージです。)
※あくまでもこれは物理の厳密な再現ではなく、動きを伝えるためのデフォルメ表現です。
右は大きい水しぶきが上がる実写リファレンス動画です。
これはスローモーションですが、やはり大きいものはスケールが大きくなる(移動距離が大きくなる)のでスピード遅めの方が迫力が出ると思います。
水しぶきアニメのチュートリアル動画です。動きに合わせて解説しています。
雨
空から重力で水滴が落ちてくる現象です。
働いてる力:重力と空気抵抗
- 雨は最初は重力で落下の速度を加速するけど、途中から空気抵抗とつり合って「終端速度(terminal velocity)」になるから、地上の見た目としてはだいたい一定の速さになります。
- 終端速度は大きい水滴ほど速く、小さい水滴ほど遅くなります。
水滴の形
- 小さい…球形
- 大きい…空気抵抗にあい、下が平なまんじゅうみたいな形。
イメージとしてしずくのような形を想定しがちですが、違うのでびっくりします。
アニメでは線とか落ちたあとの細かい水しぶきとかで表現されがち。
グリースペンシルで簡単に表現できる方法のチュートリアルを上げてる方がいたので紹介しておきます。
ジオメトリノードで雨を作って落とすのもいいですよね。
いろんな表現方法があります。しずくの形のまま表現したいんだ、っていう人も結構多いです。自分もそれが好きかも。
一応物理的な力で何が働いてるのか解説してますが、表現ってのは自由なので、現実とは全く違った表現でも全然かまいません。
説得力が欲しいとか、リアルにしたいとかいうときに気にしてみるといいと思います。





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