今回は、火や炎の2Dアニメーションを描く方法について解説します。
炎は一見するとランダムに揺らめいているように見えますが、アニメーションとして観察すると、いくつかの特徴的な動きに分けて考えることができます。
この記事では、まず炎を描くための基本的な動きを整理し、それらを組み合わせながら、小さな炎から大きな炎まで作っていきます。
特に意識したいのが、
- 凹凸が上に送られていく動き
- 炎が縦に伸びて、ちぎれていく動き
- 炎全体の山が移動していく動き
の3つです。
これらを組み合わせることで、単純な炎の動きから、複雑で大きな炎のアニメーションまで段階的に作れるようになります。
また、記事の最後では、炎がなぜこのような動きをするのかを、燃焼の仕組みから簡単に考えてみます。
炎の動きを「なんとなく揺らめかせる」のではなく、「なぜこの形になり、なぜこの方向に動くのか」を考えられるようになると、火力の違いや炎の大きさも意識して描き分けやすくなります。
ただし、ここで扱う燃焼の仕組みは、科学的な燃焼現象を完全に再現するためのものではありません。2Dアニメーションで炎を描くときに、動きや形を考えるための補助的な知識として扱います。
それでは、まず実際に炎を描くところから始めていきます。
火・炎のアニメーション
火のアニメーションを作る上で、まず覚えておきたい動きが3つあります。
- 横に揺れる動き(凹凸が上に送られるような動き)
- 縦にちぎれる動き
- 山を送っていく動き
この3つの動きを組み合わせることで、さまざまな大きさや形の炎を作ることができます。
まずは小さな炎から、それぞれの動きを順番に見ていきます。
小さい火のアニメーションを作る
まずは、小さな炎のアニメーションから作っていきます。
ここでは、
- 波を上に送る
- 凹凸を上に送る
- 炎を縦に伸ばしてちぎる
という3つの動きを、順番に試していきます。
最初はそれぞれの動きを単独で作り、最後に組み合わせてみます。
文章だけじゃわかりにくいと思いますので、Blenderのグリースペンシルを使ったチュートリアル動画もあります。一緒に描いてみたいという方は見てみてください。
波を使って火を作る
まずは、初心者でも動きをイメージしやすいように、波線をガイドとして使った炎を作ります。(全16フレーム)
●まず三角形と円を使って、炎のおおまかな形をガイドとして描きます。
●次に炎が左右に揺れる動きを表すため、波線のガイドを描きます。
ポイントは、波そのものを左右に動かすのではなく、波が上へ送られていくようにすることです。
- ❶フレームに波線を描く
- ❾フレームに❶とは反対向きの波線を描く
- ❺、⓭フレームに、その中間となる波線を描く
この波線に合わせて、三角形のガイドの中に炎を描いていきます。
まず❶→❾の形を描き、その中間となる❺、⓭フレームを作ります。残りのフレームは、この間を割っていきます。
炎の内部にある黄色い部分も、基本的には外形に合わせて同じように動かします。
この方法なら、炎が左右に揺れながら上へ流れていくという基本的な動きを簡単に確認できます。
凹凸を送って火を作る
波を使った方法は動きが分かりやすい一方で、複雑な炎を描こうとすると、毎回波線のガイドを作る必要があります。
そこで、もう少し自由に炎の形を作れるように、考え方を変えてみます。
今度は、波線そのものではなく、炎の外形についた凹凸を上へ送るように描いてみましょう。
まず、三角形と円のガイドに沿って、凹凸のついた炎の形を作ります。
そして、その凹凸が少しずつ上へ移動していくように各フレームを描いていきます。
- ❶フレームに好きな凹凸の火の形を描く
- ❾フレームに❶とは反対になるような凹凸を描く
- ❺、⓭フレームで、その間をつなぐように凹凸を上へ送る
- 残りのフレームも同じように、凹凸が上へ移動するように描く
つまり、炎そのものを左右に振るというより、炎の表面にある「凸部」が上へ流れていくと考えると描きやすくなります。
こちらの方法なら、波線の形に縛られず、尖った部分や細かな凹凸を自由に作ることができます。
※炎の内部にある黄色い部分は、先ほどと同じように外形に合わせて動かします。

炎を縦に伸ばしてちぎる
次は、炎が上下に伸び縮みしながら、先端がちぎれていく動きを作ります。
この動きは後で凹凸を送る動きと組み合わせるので、まずは単独でアニメーションさせてみましょう。
ここでも、先ほどと同じように三角形と円のガイドを使います。
- ❶フレームは、通常の炎の形にする
- ❾フレームで、炎の先端がちぎれた状態を描く
- ➐フレームでは、ちぎれる直前の、細く伸びた状態を描く
- ❸、❺フレームでは、炎の先端が徐々に上へ伸びていくようにする
- ⓫、⓭フレームでは、ちぎれた炎が小さくなりながら上昇し、下側の炎は潰れて横へ広がるようにする
- ⓯フレームは❶フレームにつながるように炎の形を戻していく
この動きで重要なのは、いきなり炎をちぎらないことです。
まず2~3フレームほどかけて炎を細長く伸ばし、ぎりぎりつながった状態を作ります。
そこから一気にちぎれ、ちぎれた部分は小さくなりながら上へ移動していきます。
このように、伸びる → 細くなる → ちぎれる → 小さくなって消えるという流れを意識すると、炎が自然にちぎれていくように見せやすくなります。
「凹凸を送る」と「ちぎれる」を組み合わせる
ここまで作った2つの動きを組み合わせてみましょう。
ベースには、先ほど作った凹凸を上へ送る炎のアニメーションを使います。
そこに、炎が縦に伸びてちぎれる動きを加えます。
今回は⓫フレームで火がちぎれる寸前の絵を入れています(タイミングはいつでもいいです。)
- ⓫フレーム付近で炎を大きく伸ばす
- ⓭フレームで炎をちぎる
- ⓯フレームで、ちぎれた炎を回転させながら上昇させる
また、⓫フレーム付近で炎が一番高くなるようにし、その前の❸フレームあたりでは一度縮ませてから伸びていくようにしています。
このように、凹凸が上へ流れる動きの途中に、炎が伸びてちぎれる動きを差し込むことで、単純な揺れだけではない炎の動きを作ることができます。
ちなみに、炎の形は必ずしも三角形や丸みを帯びた形だけではありません。
動きの途中でCやS字のように曲がったり、先端がちぎれるときに鎌のような形になったりすることもあります。
こうした特徴的な形を入れると、炎の動きにメリハリをつけることができます。
炎の形を複雑にする
曲線でできた火のアニメーションもかわいくていいと思うんですけど、もっとシャープで尖ったような形に変形してみます。
- 凹凸が上へ流れている
- 炎が伸びてちぎれている
という大きな動きがつながっていれば、細かな形はある程度大胆に変えてしまって構いません。
特に炎は動きが速いため、2コマごとに形が大きく変わっていても不自然には見えません。
内部の黄色い部分の形も外形に合わせて複雑にしてみたり、円などの形で切り抜いて、細い部分や深い凹部ができるようにしています。

仕上
最後に、細かな要素を追加して仕上げます。
- 火の粉や、細かくちぎれた炎のかけらを描く
- Glowなどのエフェクトを加えて、炎を発光させる
ここまでで、小さな炎の基本的なアニメーションが完成です。
今までのセクションの内容のショート動画です。どのような動きになるか確認してみてください。
大きめの炎アニメーションを作る
ここまでの小さな炎では、
- 凹凸を上へ送る
- 炎を縦に伸ばしてちぎる
という2つの動きを組み合わせました。大きな炎を作る場合は、ここにもう一つ、
- 炎全体の山を送っていく動き
を加えます。炎全体の大きな形を動かすことで、複数の炎の塊が集まったような、大きな炎を作ることができます。
山を送る
まずは、炎の山だけをガイドとして作ってみます。(山…炎の中で大きく盛り上がっている部分のこと)
複数の山がある炎を作りたいので、山が横方向へ移動していくアニメーションを作り、それをガイドとして使います。
今回は全体の動きを分かりやすくするため、右方向へ山を送っていきます。
- ❶フレームでは、中央に高く大きな山を作り、その左右に小さな山を置く
- ❾フレームでは、位置を変えて2つの山を作る(今回は左側の山を少し大きくする)
- ❶フレームにあった大きな山が、❾フレームの右側の山へ移動するように、その間の動きを作る
この山の動きを、炎全体の形を決めるガイドとして使います。

山のガイドに合わせて炎を描く
山を送るアニメーションができたら、それをガイドにして実際の炎の形を描いていきます。
- 山の稜線に凹凸をつけ、凸部を上へ送る
- 適切なタイミングで炎を縦に伸ばし、ちぎる
この二つのルールで描いていきます。
今回は➐、⓭フレームで炎がちぎれる直前の絵を入れています。
1サイクルの中で2回炎がちぎれるようにし、ちぎれた炎のかけらは、それぞれ左回り・右回りに移動させながら小さくして消しています。
あとは、内部の黄色い部分を外形に合わせて❶、❺、❾、⓭フレームに描き、それぞれの間を割っていきます。
最後に火の粉や細かな炎のかけらを追加し、必要に応じてGlowなどのエフェクトを加えれば完成です。
これまでのセクションをまとめた、大きめの火のアニメーションを作るチュートリアルです。
どのような動きになるか確認用です。
応用について
ここまでの方法を整理すると、大きな炎を描くときは、次の3つの動きを意識すると作りやすくなります。
- 山を送る
- 炎全体の大きな塊の動きを作る
- 凸部を上へ送る
- 炎の表面にある細かな凹凸を動かす
- 炎を縦に伸ばしてちぎる
- 炎が伸びたり分裂したりする動きを作る
この3つを別々に考えてから組み合わせることで、複雑な炎でも、毎フレームを完全に感覚だけで描く必要がなくなります。
あとは、炎の先端を尖らせたり、C字やS字に曲げたり、細かな炎のかけらを追加したりしながら、好みの形に調整していきます。
基本的な動きができていれば、炎の形そのものにはかなり自由度があります。
まずはこの3つの動きを意識しながら、自分の好きな炎の形を作ってみてください。
グリースペンシルのエフェクトを使ったろうそくの火
※以下は以前に作ったもので、拙いですが、少し残しておきます。グリースペンシルのエフェクトを使う方法になるので、全部が手描きで動かしてるわけではありません。
小さい火はほぼ動かないときもありますが、動かすなら、
- 上下の動き
下から膨らみが上がってきて火が伸びるような、燃料が上昇するようなイメージの動き - 左右の動き
風や揺らぎで動くような動き。波を縦方向に送っていくような動き(グリースペンシルのエフェクトをつけて動きをつけます。)
以下はグリースペンシルエフェクトつきチュートリアルです。

よくある形
炎のアニメでは炎らしい形を描くことも大事です。
焚火など中規模の炎では、上から見ると螺旋を描くように回転していると意識する。炎の形が変化しないのは不自然なので、なるべく変化させた方が炎っぽくなります。
- 鎌のような形
- S字
- C字
- 穴があいたり隙間が空いたりしてちぎれる直前のような形
爆発の炎
爆発作画については右の記事で詳細に説明しています。
火とは物質ではなく現象である

火とは、そこにある何かの物質ではありません。燃焼、つまり「燃えるという現象」です。
炭素を含んだメタンなどの燃料と酸素があり、そこに熱などのきっかけが加わると化学反応が起きて燃焼が発生し、火が現れます。逆に燃料や酸素がなくなると、その化学反応は続かず、火は消えます。
火は単一の物質ではなく、複数の物質が反応しながら成り立っている「状態」です。その中では、燃料の分解や酸化など、さまざまな化学反応が同時に進行しています。
そのため炎の中には、燃料・酸素・反応途中の分子・生成物など、さまざまな物質が混ざり合っており、動きも複雑になります。
燃焼とは?
まず燃焼という化学反応を詳しく見ていこうと思います。
燃焼とは、燃料と酸素が反応して、より安定な物質に変わるときに、エネルギーを放出する化学反応です。
例:メタンの燃焼
- 燃料:メタン(CH₄)
- 酸化剤:酸素(O₂)
この反応で、熱と光が放出され、二酸化炭素と水(主に水蒸気)が生成されます。
この熱と光が、普段私たちが見ている炎です。
燃焼を始めるには点火が必要ですが、一度反応が始まると発生した熱が次の反応を引き起こし、連鎖的に燃え続けます。
酸素が不足すると不完全燃焼となり、一酸化炭素やすすが発生します。

炎の色
炎の色は主に
- 温度による発光
- 原子や分子固有の発光
の2つによって決まります。
❶温度による発光
高温になった物体は電磁波を放射します。温度が高くなるほど、赤から白、青白へと見える色が変化していきます。
低温 → 赤
中温 → オレンジ・黄
高温 → 白・青白
❷原子や分子固有の発光
燃焼中の原子や分子は熱によって励起されます。励起された電子が元の状態へ戻るとき、特定の波長の光を放出します。そのため物質ごとに特徴的な色が現れます。
例:
- ナトリウム → 黄色
- リチウム → 赤色
- 銅 → 青緑色
花火や炎色反応はこの現象を利用しています。
実際の炎
実際の炎の色は、温度による発光と物質固有の発光が混ざってできています。
例えばガスコンロの青い炎は、高温であることに加え、燃焼中に生じるCHラジカルやC₂分子の発光が青色に見える原因です。
一方、ろうそくの黄色い炎は、高温になった微細なすす(炭素粒子)が光って見えている影響が大きくなっています。
※ラジカルとは、不対電子(対になっていない電子)を持つ原子や分子のことです。不対電子を持つため反応性が高く、他の原子や分子と反応しやすい性質があります。
炎の形
炎は熱や光を出していますが、その正体は高温のガスです。そのため、炎は空気や水と同じように流体として振る舞います。層流や乱流、渦といった流体の性質が見られます。
ただし炎は燃焼によって温度や密度が常に変化しているため、普通の流体より複雑です。
燃焼すると高温になり、軽くなったガスが上昇します。すると周囲から新しい空気が流れ込み、さらに燃焼が続きます。
この燃焼 → 上昇 → 空気の流入 → 燃焼という循環が炎の形を作っています。
安定した状態
ろうそくのような小さく安定した炎
しずく型になるわけ
ろうそくの炎では、気化したロウ(燃料)が下から供給されます。一方で、燃焼によって熱せられたガスは熱対流によって上昇します。
上昇する途中で燃料は徐々に消費されるため、炎は根元が太く、先端が細いしずく状の形になります。
なお、無重力空間では熱対流が起きないため、炎はしずく型ではなく球形に近くなります。
炎の中身
炎の内部は燃料が多く酸素が少ないため、主な燃焼は空気と接する外側で起こっています。そのため炎は縁が明るく、薄い膜のように見えます。

炎の乱れ
炎が大きくなると、周囲の空気との温度差や速度差によって流れが不安定になります。
すると炎は
- 波打つ
- 左右に揺れる
- ちぎれる
- 渦を作る
といった動きを見せます。
煙の記事でも紹介しましたが、流体の境界では速度差によって波のような揺らぎが発生することがあります。
これは Kelvin–Helmholtz instability(ケルビン・ヘルムホルツ不安定性) と呼ばれる現象です。
炎でも同様に、高温の燃焼ガスと周囲の空気の境界が不安定になり、小さな揺らぎが波や渦へと発達していきます。(実際には熱対流や密度差など様々な要因が重なって複雑な渦構造を作っています。)
焚火など中規模な炎
焚火程度の炎では、熱せられたガスが強く上昇し続けています。
そのため渦が十分に巻き上がる前に上へ運ばれ、多くの場合は完全な渦ではなく、
- 波打つ
- S字に曲がる
- 途中でちぎれる
といった形になります。
ちなみに、ちぎれるのは、局所的に燃料や酸素が少なくなるなど、燃焼が小さくなるからです。

爆発や噴火など大規模な炎
さらに大規模な炎になると、周囲の空気を大量に巻き込みながら上昇します。
すると小さな渦同士が成長・合体し、巨大な循環流が形成されます。
外側から空気を吸い込み(特に柱状の部分で強く巻き込まれ)、内部で上昇し、上空で広がる流れができるため、炎はキノコ雲やブロッコリーのような形に成長していきます。
右図のように、密度差や浮力のある二つの流体層の境界では、マッシュルームのような形を作りながら互いに入り込むことがあります。これをレイリー・テイラー不安定性といいます。
炎や爆発で発生した高温のガスは、周囲の冷たい空気よりも密度が低いため上昇します。このとき、上昇する高温ガスと周囲の空気の境界では、レイリー・テイラー不安定性によってマッシュルーム状の構造が現れることがあります。
さらに、構造の境界面では流れる速さの違いによってケルビン・ヘルムホルツ不安定性が発生し、傘の部分に見られるモコモコした渦状の形が作られると考えられています。
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