アニメーションの基本「重心」:力・重量感・バランスを表現する

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アニメーションでは、「重心が不安定」「バランスが悪い」「重さを感じない」

など、重心重さという言葉がよく使われます。

このポーズは安定感がない、バランスが悪いから直して、と言われても、何が「バランスがいい状態」なのかは重心の概念がわからないとなかなか直すことが難しいです。

逆に、キャラクターのポーズや動きは、重心を意識するだけで自然さが大きく変わります。
めちゃくちゃ変なポーズなのになぜかバランスがとれていて、かっこよく見えるとか、
持っているものがとても重たいのにきちんと見えるポーズを作ることもできます。

今回は、

  • 重心とは何か
  • なぜバランスに関係するのか
  • アニメーションやポージングでどう使うのか

を、物理の基本から整理してみます。

※物理の基本から理解した方が、いろんなシチュエーションで応用しやすくなると思いやっています。

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重心とは?

まずそもそも重心とは何なのでしょうか?

重力は物体の各点にかかっている

地球では、物体全体に重力がかかっています。

例えば棒があった場合も、あらゆる場所すべてに重力が働いています。(ちなみに物理では力が働いてる場所を作用点といいます。)

ですが、毎回すべての点を別々に考えるのは大変です。

そこで、全部の重力をまとめて、1点に重力を合成した力を考えようとしたものが重心です。

つまり重心とは、重力の合力の作用点です。

少し難しい言い方ですが、全部の重さを1点にまとめた場所くらいの理解で大丈夫です。

だから、例えば定規など、長いものの真ん中付近を指一本で支えてみてください。重心のすべての重さをまとめた力とつりあって、左右に傾かずに乗せることができます。

ここで指で支えた場所を支点といいます。

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重心の位置を探そう

重心の概念はなんとなくわかったけど、どうやって重心の位置をみつければいいのでしょうか?

左右同じ重さだったら、なんとなく真ん中でバランスが取れそうってわかるんですが、重さが違う場合はどこに重心があるんでしょうか。

重心の求め方

細い棒の左端に2kg、右端に1kgのおもりをつけた物体があります。(右図の上側参照)

重心の位置の求め方

部分の重心の重さと距離を掛けたもの
を足し合わせたものと

全体の重心の重さと距離を掛けたもの

が等しいところを探すと重心の位置になります。

実際に計算してみます。

細い棒の重さは微々たるものなので無視して、左右のおもりの中心位置にそれぞれの重心をとります。

左端を0の基準位置として、

Bの重さと基準位置からの距離を掛けたもの
2kg × 0m = 0

Aの重さと基準位置からの距離を掛けたもの
1kg × 3m = 3

これを足すと3になります。
3 + 0 = 3

求める重心にかかる全体の重さと基準位置からの距離を掛けたもの
3kg × Xm = 3X

3X=3 X=1なので、B点から1mの地点が重心です。

上下にずれた方向にも部分的な重心がある場合は?

さっきまでは上下方向には同じ位置に部分の重心があったんですが、上下方向にずれた場所に部分的な重心があった場合はどうすればいいでしょうか。

さっきまでと同様に、上下方向と横方向に分解して、同じ計算をすれば良いです。

しかし、それより簡単な方法もあります。

2点の重心がある場合は、重心同士を線で結んで、重さの比率と逆の比率で線を分割したところが重心になります。

例えば、どこでもいいので、左側の重心が5kg、右側の重心が2kgの場合は、その間を線で結んで、その線を2:5で分割すれば、その点が全体の重心になります。(上図の下側参照)

また、重心の位置は必ずしもその物体上にあるわけではないこともポイントです。物体とは離れた位置に重心があることもよくあります。

重力の作用線

他にも重心を探す方法があります。もっと複雑でわかりにくい物体でも重心を探せます。

右図のように、物質のある一点を糸で吊るします

すると、物体の重心は糸がついた支点真下にきます。

しかし真下のどこかはわかりません。

物理では、力が作用するその力の方向(例えば重力なら垂直の方向)に線を引いたものを作用線といいます。

なので、支点から重心の作用線を引いて、また違う点を支点にして糸で吊るして、2本の作用線が交わったところが重心とわかります。

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重心からずれたらどうなるの?

重心の位置の出し方はなんとなくわかったけど、たとえば指で棒を支える場合、重心からずれるとどうなるでしょうか?

重心より左の位置で支えると、棒は右側に落ちます。

これは実際は落ちるというか、右側が回転しようとしてそのまま落ちていってしまいます。
この、回転しようとする力を

力のモーメント

といいます。(トルクともいう)

力のモーメント

力のモーメントは右図で言うと

腕の距離r × 腕に対して垂直の力F

で表せます。

例えばトンカチで釘を打つとき、トンカチの柄(持ち手)の下の方を持ったほうが強い力が出ますよね?

これは、
支点から遠いほど(腕の距離があるほど)、
回転させる力が大きくなる
からです。

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力のモーメントのつりあい

力のモーメントを比べて、バランスがとれるかどうか見ることもできます。

細い棒の左端に2kg、右端に1kgのおもりをつけた物体があります。(右図の上側参照)

真ん中を支点とすると

Bが反時計周りに回ろうとするモーメント
1.5×2g=3g

Aが時計周りに回ろうとするモーメント
1.5×g=1.5g

(※モーメントは重さではなく力を掛けるのでgがついています。が、比べるときはあまり考えなくていいです)

Bのモーメントの方が大きいのでBが回転し、傾いて落ちてしまいます。

つりあう点を探す

つりあう位置を探すには、左右のモーメントが同じになる点を探します。

これは重心の考え方とほとんど同じです。

力が大きい側ほど支点に近くなり、力の比とは逆の比で距離が分割されます。

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やじろべえはなぜ安定しているの?

重心やモーメントのことを説明してきたので、安定するのはどういうときかを見ていきます。

1点の支点で支えてるのになぜか安定している、やじろべえというおもちゃがあります。
定規などを指で支えても少しでもバランスが崩れると傾いて落ちますが、やじろべえは少しくらい指を動かしても落ちません。

重心の位置

やじろべえの重心の位置は支点よりにあります。

右のおもりが下に傾いたら、重心が左に偏ります。すると、支点から重心に腕の距離rが出来て、重心に働く力FをかけたrFの力のモーメントが発生します。(反時計周りに回転する力)

すると重心が中心に戻り、元の位置に戻ります

つまり、やじろべえは傾くと、

元に戻ろうとする力のモーメントが発生します。

おきあがりこぼしも同じです。

下側に重りがあるため、倒れても元に戻ろうとします。

このように、重心が低いものは安定しやすい傾向があります。

重心が支点より上にある場合

では重心支点よりにあるやじろべえも見てみます。

このやじろべえが右側に傾いたら、
重心が右に偏ります。すると、支点から重心に水平方向の腕の距離rが生じます。
そして重心に働く力Fを掛けたrFという力のモーメントが発生し、時計回りに回転しようとします。

するとますますやじろべえは右側に傾き、落ちてしまいます。

重心が支点より上にある場合は元に戻ろうとする力は発生しませんから、つりあいの位置で支えても不安定です。

やじろべえなんて見たことない、直感的にわからない、っていう方は右側の動画を見てみてください。

実際にやじろべえを使って実験し、とてもわかりやすく解説しているオススメ動画です。

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人体の重心

人体の重心はどこにあるのか見ていきます。

人体の重心の位置

人間の重心は、体格・性別によっても変わるし、姿勢によっても変わってきます。

直立状態だと、

  • 上半身の重心…第7~9胸椎
  • 下半身の重心…大腿1/2~と近位1/3の中点
  • 身体重心…第2仙椎付近

くらいで、身体全体の重心はおへその少し下、地面から計って身長の55~57%くらいとされています。

支持基底面とは?

人間は足で身体を支えています。このとき、

  • 足裏
  • 地面に接している部分(杖なども)

を囲んだ範囲を支持基底面と呼びます。

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姿勢・ポーズのバランス

姿勢やポーズを考えるときは
重心支持基底面の関係を意識すると説得力のあるポーズが作れるようになります。

今まで、支点の横方向に重心がずれたら、力のモーメントが発生して回転する力が働くといいました。

支持基底面も同様に、重心が支持基底面から横方向に外れると力のモーメントが発生して回転しようとします。

人間だったら倒れそうになるし、見ていても不安定に見えます。

重心から垂直に下に引いた線は重心の作用線といいます。

  • 安定して見える…重心の作用線が支持基底面内にある
  • 不安定に見える…重心の作用線が支持基底面から外れる

右図上の例でもあるように、足を広げて支持基底面を広げると重心が外れにくいので安定しやすく、片足立ちなど、支持基底面が小さくなると不安定になりやすいです。

アニメーションでの重心の考え方

上図の腰を曲げるときの図ですが、人間はおじぎをするとき、無意識にお尻を後ろに引いてしまいます。そうしないと、重心が支持基底面を外れて倒れそうになるからです。

重心の作用線が支持基底面ぎりぎりのポーズは、なんとか立てるけど、少し力を入れて踏ん張らないといけないですよね。

そして、重心が支持基底面を思い切り外れると前の方に倒れそうになります。

これらを応用すると、例えば、

  • 重心線が支持基底面の中央付近 → 安定した立ち姿
  • 重心線がギリギリ端にある → 緊張感のあるポーズ
  • 重心線が外れている → 倒れそう、不安定、動き出しそう

といった表現ができます。つまり、

重心をどこに置くかで、キャラクターの状態や感情まで表現できる

人間は筋力があり、ある程度踏ん張りも効きます。どのポーズも安定しないといけないわけではなく、躍動感のあるポーズなら重心位置が支持基底面からはみ出す必要もあるかもしれません。

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重さを表現する

ものを持ったときの姿勢で重さを表現することができます。

荷物を持つときのバランス

人間が荷物を持って安定しようとすると、

  • 荷物の重心
  • 身体の重心

を合わせた全体の重心から下ろした重力の作用線を、支持基底面内に収める必要があります。

左の軽そうな荷物では、荷物の影響が小さいため、全体の重心は身体の重心に近く、自然な姿勢を保てています。

一方、右の重そうな荷物では、荷物の影響によって全体の重心が前方へ引っ張られます。

そのため人間は、倒れないように、

  • 上半身を後ろへ反らす
  • 腰を引く
  • 足を踏ん張る

などして、全体の重心を支持基底面内へ戻そうとします。

つまり、身体の重心移動や姿勢変化が大きいポーズほど、「重い物を支えている感じ」が強く見えます。

キャラクターの力を表す

画像下に剣を持つポーズもいくつか作成してみました。

体の重心がほとんど変わっていない持ち方は、ゲームなどでよくある、大剣を軽々と扱っているキャラクターのように見えます。
剣が軽いのかもしれないし、非常に高い筋力を持っているのかもしれません。

しゃがんだ持ち方では、

  • 重心を下げる
  • 剣を身体へ引き寄せる
  • 支持基底面を広げる

ことで、なんとか安定を保とうとしているように見えます。

バランス維持を優先しているため、あまり素早く剣を振り回せそうには見えません。

上半身を大きく反らせた持ち方では、重い荷物を持ったときと同じように、身体の重心を大きく移動させています。

そのため、「持ち上げるだけで精一杯」という印象が強くなります。

力でバランスをとってみる

重い物を持つと、その重さによって力のモーメントが発生し、身体は回転しようとします。

普通の人間なら、

  • 腰を引く
  • 身体を反らす
  • 足を広げる

などして、全体の重心位置を調整しながらバランスを取ろうとします。

しかし、非常に大きな筋力や特別な力があれば、そのモーメントにつりあう力を直接出せるかもしれません。

一番下には、指一本で支えるポーズも作成してみました。

現実では非常に困難な姿勢ですが、強大な筋力や特殊な能力があるキャラクターなら、重心による不利を力で支えているように表現できます。

このように、どれだけ重心を調整しているかどれだけ力で支えているかを考えることで、キャラクターの強さや重量感を表現できます。

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まとめ

  • 重心は重さが集まっていると考える点
  • 重心の作用線が支持基底面に入ると安定する
  • 支持基底面が広いほど安定する
  • 重心を意識すると、ポーズや動きの説得力が上がる

アニメーションでは、単に形を描くのではなく、重心の位置、バランスのとり方を考えることで、重さや存在感を表現できます。

また、現実では多少バランスが崩れていても、人間は筋力で踏ん張れます。

なので完全に理論通りにしなくても大丈夫で、むしろ少し崩した方が、自然で生きたポーズになることもあると思います。

どのようなポーズにしたいか考えて、安定・不安定、重さ、重量感などを表現したいときに重心を考えてみると良いと思います。

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参照

重心の物理的解説やアニメーションのポージングなどの解説で参考にした記事や動画です。

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