Blenderでは、最終的な動画を直接書き出すこともできますが、
再編集や色調整を行う場合は、劣化のない素材を作ってから編集ソフトで仕上げるのが一般的です。
たとえば画像であれば、
PNGやOpenEXR形式で書き出して、
あとで画像編集ソフトに読み込んで加工して仕上げることができます。
動画の場合も同様に、非圧縮またはロスレス圧縮で出力しておくことで、
画質を劣化させずに編集を重ねることができます。
そのための設定についてまとめていき、
- 編集用として使いやすい書き出し設定
- 保存用として使える書き出し設定
などを紹介していきます。
この記事は、Blenderで編集用の動画書き出しついて解説している初心者~中級者向けの記事です。
難易度
一般的な配信用動画設定については以下の記事で解説しています。↓
再編集用の中間動画ファイル素材作成について
最適な形式
静止画書き出しが一番です。
Blenderで編集用の動画ファイルを書き出す場合でも、一番画質を保てるのは連番静止画として書き出すことです。動画として書き出すと、どうしてもどこかでデータが劣化してしまい、元のデータと完全に同じにはなりません。
とはいえ、次のような理由で動画ファイルとして書き出したい場合もあります。
- 静止画にするとファイル数が多くなりすぎる
- 容量が大きくなりすぎる
- 音声と合わせて一本のファイルにまとめたい
そういう場合に備えて、Blenderで編集用の動画ファイルとして書き出せる設定について解説します。
なお、私は映像のプロではありません。ここではあくまで 「Blenderでこのような設定も可能だよ」という紹介 として解説しています。ですので、「プロはこうしている」といった内容の解説ではないことをご了承ください。また、Blenderでの再編集を目的にしており、他のソフトに合った書き出し方法などは書いていません。
静止画書き出しについては最後の方に少し触れますが、メインは動画の書き出し設定の解説になります。
Blenderでできるロスレス動画書き出し
編集用に中間素材として動画データを書き出す場合、なるべくロスレスで保存することが望ましいです。
Blender(4.5以上)で中間素材として使えるロスレス書き出し可能なコーデックは、主に以下の通りです。
- DNxHD…中間形式として使用可能、ロス/ロスレス両方対応
- FFV1…ロスレス、フレーム内圧縮、アルファ対応
- ProRes…Apple製、高品質ほぼロスレス、プロ向け
BlenderマニュアルによるCodec(コーデック)説明より
Blenderで実際にロスレス書き出しできたコーデック/コンテナ
この中で、実際ロスレス書き出しができたコーデック/コンテナの組み合わせ。
- ProRes/QuickTime
- mac用に作られたコーデックですが、Blenderでも問題なく使用可能
- Profileの種類が豊富で、ビデオ編集での再生やスクラブが軽く快適
- Apple製品でも中間ファイルとして広く使われている
- FFV1/AVI
- ファイルサイズは大きいが、色深度16bitまで選択可能
- 高画質を完全に保持できるため、保存用のマスター素材に最適
- H.264/MPEG-4 or AVI
- ファイルサイズが大きくなる/再生・スクラブ時にやや重くなる
※H.264も「ロスレス」として書き出せる設定があるので入れています。DNxHDもロスレスで書き出せますが、Blenderではメインのコンテナで動画書き出しができなかったため、今回は省略しています。ここでは自分が試した組み合わせを掲載しています。他にもある可能性があります。
画質の差についてですが、肉眼で見た限り、この4種類の差はほとんどわかりませんでした。クオリティが同じ設定とは言えませんが、動画書き出しを行った場合、ファイルサイズはProRes/QuickTimeが15MBのとき、FFV1/AVIは31MB、H.264/MPEG-4 or AVIは25MBくらいになる感じでした。
編集用、ロスレス動画書き出しおすすめ設定
ProResのmov動画が、ファイルサイズや作業の軽さなど総合して使いやすいと思いおすすめしています。(Blenderで再編集用)
基本的な設定
- Container(コンテナ)…QuickTime
- Video Codec(動画コーデック)…ProRes
- Color Depth(色深度)…10
- Profile…ProRes 422HQ(下で詳細に解説しています。)
- Audio Codec(音声コーデック)…PCM(非圧縮)
色深度(Color Depth)について
- 色深度 = 1チャンネルあたりの情報量
- 8bit → 256階調
- 10bit → 1024階調
- 16bit → 65536階調
- メリット
- 高い色深度ほど、グラデーションが滑らか
- 色補正や合成を行うときの劣化を抑えられる
- HDRやZ深度などの情報も保持可能(EXRなどで)
- 注意点
- 色深度が高いほど、ファイルサイズが大きくなる
- 処理も少し重くなる(再生・スクラブなど)
再編集する可能性があるなら、色深度はできるだけ高いものを選んでおくと安心です。
中間編集用は10bit、保存用は16bit、と使い分けるのが実用的です。

ProRes 各プロファイルの説明
- ProRes 422 Proxy
- もっとも軽い。データ量が少なく、画質もいちばん低い。
- 用途:編集作業を軽くするための「仮(プロキシ)映像」に最適。ノートPCなどでとにかく動作を軽くしたいときなど。
- ProRes 422 LT
- 標準より少し軽い。画質はやや落ちるが十分きれい。
- 用途:試写やラフ編集など、最終納品前の作業向け。チーム共有用の中間データ。
- ProRes 422
- 標準的なバランス。画質と容量のちょうどよい中間。
- 用途:一般的な編集ワークフロー全般。YouTubeや一般TV番組の制作に向いている。
- ProRes 422 HQ
- ProRes 422より高画質・高ビットレート。
- 用途:放送品質や映画制作など、高品質を求める用途。本番納品用・放送局納品など。
- ProRes 4444
- RGB(フルカラー)+アルファチャンネル(透過情報)を保持。
- 用途:VFX・合成・CGなど、透明部分を扱う映像制作向け。Blenderなどでレンダリングした素材を合成に使う場合。
- ProRes 4444 XQ
- ProResシリーズで最高品質。色の階調・明るさの情報をほぼ完全に保持。
- 用途:カラーグレーディングや映画のVFX仕上げなど、最高レベルの品質が必要な現場。劇場映画や高ダイナミックレンジ(HDR)のマスタリング。
保存用動画書き出しおすすめ設定
基本的な設定
- Container(コンテナ)…AVI
- Video Codec(動画コーデック)…FFV1(FFmpeg video codec #1)
- Color Depth(色深度)…10~16
ファイルサイズが重くなるんですが、色深度を16Bitまで選択できます。高画質のまま保存したい場合におすすめです。

画像シーケンス書き出し
最初にお伝えした通り、最も劣化が少なく、効率的に作業できるのは画像シーケンスとしての静止画書き出しです。
Blenderでは以下の形式で連番画像として書き出せます:
- PNG
- OpenEXR
- OpenEXR MultiLayer(複数レイヤー情報を保持する)
画像シーケンス出力のメリット
- クラッシュしても途中から再開可能
- 1フレームだけ再レンダーできる
- 無劣化・高品質
- EXRならHDRやZ深度などの情報も保持
- 編集ソフトで簡単に動画化・合成・色調整できる
つまり、編集の耐久性も強く、柔軟で効率的に変更・編集・書き出しができます。
画像シーケンス出力のデメリット
- 高解像度・無劣化出力のため、ファイルサイズが非常に大きくなる
- レンダリング時間が通常より長くなることが多い
実際のワークフロー例
- Render Properties → Output → File Format を「PNG」または「OpenEXR」「OpenEXR MultiLayer」に設定
- 「Compression」は0(無圧縮)または軽く(10%程度)
- 出力フォルダを設定し、レンダー実行
- 生成された連番画像を、BlenderのVSEやDaVinci Resolveなどに読み込んで動画化
こうすれば、途中で落ちても再開でき、品質を保ったまま編集が可能です。



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