Blenderでアニメーションを動画として書き出そうとすると、
設定画面に「Container」や「Codec」など、見慣れない単語がずらっと並びます。
「MP4とAVIって何が違うの?」
「H.264ってよく聞くけど、実際どんな設定?」
──そんな疑問を持った方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Blenderで動画を書き出すときに必ず出てくる用語の意味と違いを、できるだけわかりやすく整理します。
さらに後半では、
- よく使われる実用的な設定
- プレビュー・完成品それぞれのおすすめ設定
- どうやって動画は圧縮されているのか
についても解説していきます。

この記事は、Blenderの動画書き出しの基本設定、コーデック・コンテナについて詳しく知りたい初心者向けの記事です。
難易度
再編集や合成に向いた「中間ファイル」書き出し設定については以下の記事で書いています。
そもそも動画ファイルの形式ってどういうもの?
動画ファイルは、動画データ、音声データ、メタデータ(タイトルや動画時間などの情報のデータ)などいろいろなファイルが合わさってできています。画像ファイルのように1つのファイルでできているわけではありません。
そのような様々なデータを扱いやすいように圧縮する方法をコーデック(Codec)といい、そしてその複数のデータを入れる箱をコンテナ(Container)と呼んでいます。
コーデックも、動画のコーデック方法や、音声のコーデック方法があり、さらにそれをまとめるコンテナにも複数の形式があります。それらの組み合わせにより、動画ファイルの形式が最終的に決まります。
また、ファイルの拡張子にはコンテナのファイル形式が表示されています。だから、video.mp4というファイル名を見ても、それはコンテナがMP4ということを表しているだけで、コーデック方法などは分かりません。
つまり、拡張子を見ただけでは映像の形式は完全にはわからないのです。

画像ファイルの場合、PNG → 可逆圧縮、8bit/16bit固定(ソフト次第で16bit指定可能)、JPEG → 非可逆圧縮、8bit固定など、ある程度、形式から圧縮方式+色深度や表現範囲が想定できると考えてOK。(例外もあるよ)
コンテナ、コーデックとは?
動画の形式はコンテナ + コーデックの組み合わせ(Format = Codec + Container)と言いましたが、コンテナやコーデックについてそれぞれもっと詳しく見ていきましょう。
コーデック(Codec)
Codec(コーデック)という名前は、Coder–Decoder(コーダー・デコーダー)に由来します。
動画を圧縮(エンコード)したり、再生時に復元(デコード)したりするアルゴリズムのことを指します。
コーデックでは、圧縮率・色深度・可逆/非可逆・ビットレートなどを設定でき、画質や色深度はコーデック次第で柔軟に調整可能です。
つまり、動画の品質や特性を決める重要な要素であり、コンテナよりも影響力が大きい場合があります。
「本当の映像形式(画質・圧縮・編集耐性)は コーデックが決める」「コンテナは入れ物に過ぎず、映像の本質的な品質はコーデック次第」と、言ってしまってもいいかもしれません。

代表的な動画コーデック
H.264(圧縮する)
Youtubeなどにも使われてる一般的な動画圧縮方式。高い圧縮率でファイルサイズを小さくできます。
名前が多いのでたまに混乱します。H.264 = AVC(Advanced Video Coding) = MPEG-4 Part 10 は同じものを指しています。一般的にはH.264と呼ばれるし、Blenderでもそう表記されるけど、ソフトによってはAVCと書かれています。ちなみにコンテナの形式にもMPEG-4というものがありますが別物です。混乱しやすいので注意してください…。
ProRes(ほぼ圧縮しない=ほぼロスレス)
Appleが開発した高品質・編集向けの動画圧縮方式。非可逆ながら画質劣化が少なく、編集耐性が高い。映画・テレビのポストプロダクションやプロ向け編集用に使われます。
使い分け
動画を最終的に視聴するだけなら、圧縮ありのコーデック(例:H.264)を使うのが一般的です。軽量で再生互換性が高く、扱いやすいためです。一方、編集や再加工を行う場合は、画質をなるべく損なわないロスレスまたはほぼロスレスのコーデック(例:ProRes、DNxHD、FFV1など)を選ぶと安心です。これにより、色補正やカット編集を繰り返しても画質劣化を最小限に抑えられます。
コンテナ(Container)
動画ストリームや関連情報(音声・字幕など)をひとまとめに格納する“箱”。動画の中身(映像データ)だけでなく、音声や字幕、タイムコードなどの情報もまとめて保存できるファイルの形式というイメージです。
デバイス・用途による違い
コンテナの形式がいろいろあるのには デバイスと用途の違い があります。
- 再生互換性:スマホ、PC、ゲーム機、Webブラウザなど、対応しているコンテナが違う
- 編集向きか配信向きか:
- 配信用 → MP4, WebM など軽量で広く再生可能
- 編集用 → MOV, MKV など編集耐性や多トラック対応重視
- 拡張性や特殊機能:字幕・チャプター・複数音声などを入れたい場合、MKVやMOVが便利
また、全てのコンテナで全てのコーデックが使えるわけではなく、コンテナによっては使えないコーデックもあります。

よくある誤解
「MP4は画質が悪い」「MOVはプロ仕様」などは、どんなコーデックにするかで品質は変わるし、「H.264=MP4」などは、よくセットにされるけど、H.264は“圧縮方式”で、MP4は“入れ物”。そう決まっているわけではありません。
一般的によく使われる設定
出力設定はOutputプロパティで設定します。
よく使う設定
Blenderで作った動画をとにかく出力したい場合、
- File Format(ファイル形式)…FFmpeg Video
- Container(コンテナ)…MPEG-4
- Video Codec(動画コーデック)…H.264
- Audio Codec(音声コーデック)…AAC(音声がない場合はNo Audio)
でOKです。YouTube など多くのプラットフォームで再生可能な、一般的な動画形式を作成できます。(今のバージョンでは動画書き出しのFile FormatはFFmpegしかなく、この形式を選べば、どんなコンテナ・コーデックの組み合わせでも選べます。昔はAVI系の形式がありましたが4.2で削除されました。)
とにかくこの設定だけでそれなりの動画は書き出せます。もっと詳しく調整したい方は続きを読んでください。
品質調整
動画の画質クオリティを変えたい場合はOutput Qualityで選択できます。

- Constant Bitrate:常に同じビットレートで圧縮
- Lossless:無劣化で圧縮(再生には向かない)
- Perceptually Lossless:ほぼ無劣化、人の目ではわからない圧縮
- High Quality:高画質で圧縮
- Medium Quality:標準画質・標準圧縮
- Low Quality:やや画質を落として圧縮
- Very Low Quality:かなり画質を落として圧縮
- Lowest Quality:最も画質を落として圧縮
※品質がいいほどファイルサイズが大きくなる。Lossless(ロスレス)で書き出すと再生できないこともあるので再生用には非推奨。
Constant Bitrateに関しては以下の記事でも書いています
書き出しスピード
また、Encoding Speedで書き出しスピードの調整もできます。ただ早くするとファイルの圧縮がうまくできずファイルサイズが大きくなります。

- Realtime:リアルタイム重視。エンコードは速いが圧縮効率は低く、ファイルサイズは大きめ。
- Good:バランス型。速度と圧縮効率の中間。
- Slowest:最大圧縮。エンコードは非常に遅いが、最もファイルサイズを小さくできる。

プレビュー、完成品でのおすすめ設定
あくまでも趣味や個人で楽しむ用の設定です。プロが使うべき設定などではありませんので注意してください。
プレビュー用
プレビューやテスト用では軽さを重視します。
- File Format(ファイル形式)…FFmpeg Video
- Container(コンテナ)…MPEG-4
- Video Codec(動画コーデック)…H.264
- Audio Codec(音声コーデック)…AAC(音声がない場合はNo Audio)
品質調整…Output QualityでMedium Quality:標準画質・標準圧縮、Low Quality:やや画質を落として圧縮 などに設定。
完成品用
完成品用としては、Youtubeなどのプラットフォームで再生できる画質の良い動画を目指します。(プロ仕様とかではありません)
- File Format(ファイル形式)…FFmpeg Video
- Container(コンテナ)…MPEG-4
- Video Codec(動画コーデック)…H.264
- Audio Codec(音声コーデック)…AAC(音声がない場合はNo Audio)
品質調整…Output QualityでHigh Quality:高画質で圧縮、Perceptually Lossless:ほぼ無劣化、人の目ではわからない圧縮、またはConstant Bitrateでビットレートを指定して設定。
Youtubeなどは、逆に高品質すぎてファイルサイズが大きいとカクついたりすることもあるらしいので、そこまで高品質にこだわらなくてもいいんじゃないかな…と思います。それぞれのユーザーが持ってるPCも高性能なものばかりではないので…。
※基本的にBlenderからロスレスのデータを書き出して動画編集ソフトで加工・編集・書き出しを行ったりする人も多いです。が、Blender単体でもかなり品質の良い動画が書き出せると思います。
その他パラメータについて
なんか謎のパラメータがあるのが気になるので解説します。特に重要とか設定しろということではないので、気になる方は読んでみてください。
Color Management…これは多くの場合レンダープロパティで決めたカラーマネジメント設定に従うことが多いので、無視します。
Pixel Density…「この画像は紙やソフト上でどのくらいの大きさに表示される想定か」を示すだけで、動画や画面上での画質には関係ありません。無視します。
Color Depth…色深度です。8bitは「256段階/チャンネル」。10bitは「1024段階/チャンネル」 保持できる色数が増えます。10bitの方がより滑らかなグラデーション表現が可能でキレイ。注意点:再生機器やプレイヤーが10bitに対応していないと、正しく再生できなかったり、色が変に見えることがあるので編集用向け。一般的なWeb配信やYouTube用なら8bitで十分
Keyframe Intervalについてはコーデックがどのように動画を圧縮しているのか知っている必要があるので、まずは圧縮について解説します。
Intra-Frame CompressionとInter-Frame Compression
動画は膨大な量の静止画(フレーム)や音声データを含むため、そのままでは再生や保存が重くなります。そこでコーデックを使って圧縮します。圧縮方法にはIntra-Frame Compression(フレーム内圧縮)とInter-Frame Compression(フレーム間圧縮)があります。
圧縮方式には2種類
- Intra-Frame Compression(フレーム内圧縮)
- 1フレームだけで完結する圧縮
- JPEGのようにフレーム単体で復元可能
- キーフレーム(Iフレーム)がこれにあたる
- Inter-Frame Compression(フレーム間圧縮)
- 前後のフレームとの差分だけを保存する圧縮
- Pフレーム、Bフレームがこれにあたる
- ファイルサイズを大幅に減らせるが、単独フレームでは復元できない
例えば猫が歩いているシーン。猫以外の風景は動いていないので、まず最初のフレームをIフレームとして、フレーム内圧縮で画像を圧縮して保存します。そして、猫が歩いているところの差分だけを次のフレームでP,Bフレームとして保存します。
I,P,Bフレームを作って圧縮する方法をGOP(Group of Pictures)といいます。MPEG方式のコーデックでよく使われる圧縮法です。

以下のページに圧縮について詳しく書かれています。
Keyframe Interval(キーフレーム間隔)
Keyframe Intervalのパラメータではこの圧縮方式の詳細な設定ができます。
- 意味:1つのGOPに含まれるフレーム数
- 0に設定 → “intra_only”、つまり全てのフレームを単独で保存(インターフレーム無し)
- 数値を大きくすると → ファイルサイズは小さくなるが、再生には高性能な機器が必要
再編集やカラーグレーディング用なら小さめ(0や1)にして、全フレームが独立している方が劣化が少ないです。
Max B-frames(Bフレームの最大数)
- 意味:Bフレームを使うかどうかの設定
- Interval(間隔):非Bフレーム(IフレームやPフレーム)の間に挿入できる最大Bフレーム数
- Bフレームあり → 圧縮効率が良くなる(ファイルサイズ小)
- Bフレームなし → 再編集や再エンコードには安全
再編集用ならBフレームは無効化するのが無難。観賞用・配信用ならBフレームを有効にして圧縮効率を上げてもOKです。
まとめると、「Keyframe Interval」と「Max B-frames」は圧縮効率と再編集のしやすさのバランスを決める設定です。ファイルサイズが膨大になったときや、再編集用に劣化をなくしたいときに気を付けると良いパラメータです。
Blenderでサポートされる動画・音声フォーマットまとめ
Blenderマニュアルに書かれている、それぞれのコンテナ・コーデックについてのまとめです。自分で実際にテストはしていません。
基本
- Blenderは FFmpeg を使用して動画のエンコード/デコードを行う。
- コーデック:動画や音声を圧縮/伸長するアルゴリズム
- ロスレス:データを失わず圧縮
- ロス有り(Lossy):画質・音質を犠牲にして小さく圧縮
- コーデックは RGBまたはYUVカラーのみ圧縮可能 が多いが、以下のコーデックは アルファチャンネル(RGBA)も対応:
- FFmpeg video codec #1
- PNG
- QuickTime Animation
- WebM/VP9(Blenderでは読み込み不可)
コンテナ
| コンテナ | 説明 | 拡張子 |
|---|---|---|
| MPEG-4 | 動画と音声を様々なコーデックで保存可能。現代ソフト・ハードで広くサポート | .mp4, .mpg, .mpeg |
| Matroska (MKV) | 無制限の動画・音声・画像・字幕トラックを1ファイルに保存可能 | .mkv |
| WebM | VP9 + Vorbis/Opus音声専用。Web配信用 | .webm |
| AVI | RIFF派生、古くから広く使われる | .avi |
| DV | デジタルカメラ向け。DCT圧縮フレーム単位、音声は非圧縮 | .dv |
| Flash | インターネット配信用。動画コーデック固定 | .flv |
| MPEG-1 / MPEG-2 | VHS/CD画質圧縮 / DVD向け圧縮。動画・音声コーデック固定 | .mpg, .mpeg, .dvd, .vob |
| Ogg | 無制限トラック保存可能 | .ogg, .ogv |
| QuickTime | 複数トラック対応。MOV形式 | .mov |
動画コーデック(全てのコンテナで使えるわけではない)
| コーデック | 特徴 |
|---|---|
| No Video | 音声のみ |
| AV1 | VP9の後継、ロス圧縮、高圧縮効率 |
| H.264 | MPEG-4派生、ロス圧縮、高圧縮率・高画質 |
| H.265 / HEVC | H.264改良版、高効率、4Kなど高解像度向け |
| WEBM / VP9 | Web向けロス圧縮 |
| DNxHD | 中間形式として使用可能、ロス/ロスレス両方対応 |
| FFV1 | ロスレス、フレーム内圧縮、アルファ対応 |
| HuffYUV | ロスレス、YCbCr置き換え用 |
| ProRes | Apple製、高品質ほぼロスレス、プロ向け |
| PNG | 各フレームを独立画像として保存、アルファ対応 |
| QuickTime Animation | QuickTime元々の形式、アルファ対応 |
| Theora | Oggコンテナ用、ロス圧縮 |
音声コーデック
| コーデック | 特徴 |
|---|---|
| No Audio | 動画のみ |
| AAC | ロス圧縮、高音質 |
| AC3 | Dolbyの圧縮技術 |
| FLAC | ロスレス圧縮 |
| MP2 / MP3 | ロス圧縮、一般用途 |
| Opus | 音声・汎用音声用ロス圧縮 |
| PCM | 非圧縮、標準的なデジタル音声形式 |
| Vorbis | MP3/AAC類似、ロス圧縮、高音質 |
注意点・制限
- H.264などは 縦横のサイズが2で割り切れる必要がある
- アルファ対応コーデックは限られる(ほとんどのコーデックは透過動画書き出しができない)
- すべてのコーデックがすべてのコンテナで使えるわけではない




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