車のボディに映り込むピカピカの光沢。
スーツやソファなど、布にだけ現れるしっとりとした柔らかいツヤ。

このような表面に現れる質感の違いは、単なる色や粗さだけでは表現しきれません。
物自体の質感の上に、さらにコーティングをしたり、けば立ったものが覆っているような見た目になります。

Blenderでは、こうした質感の“仕上げ”をリアルに再現するためのパラメータが用意されています。
特に便利なのが、Principled BSDFシェーダーに搭載されているCoat(クリアコート)
とSheen(繊維ツヤ)
です。
- Coatは車やスマートフォンのように、表面に透明な光沢層がある素材を再現したいときに使います。ツヤっと反射するハイライトが特徴です。
- Sheenは布や繊維など、マットでありながら光をやわらかく返す素材に適しています。スーツの肩口やベルベットの陰影など、控えめだけど存在感のあるツヤを演出できます。
この記事は、BlenderのPrincipled BSDFのCoatとSheenの使い方について解説した初心者~中級者向けの記事になります。
難易度
Principled BSDFでの使い方
CoatやSheenのパラメータはPrincipled BSDFの中にあります。
この2つはマテリアルのベースカラーや金属度、粗さなどの設定のさらに上に追加される処理です。最後の表面処理として質感を足すことができるというのが最大の特徴です。

ベースのマテリアルの上にCoat(クリアコート)があり、その上にSheenで繊維やホコリのような見た目を追加します。

どちらもEEVEEとCycles両方で使用できますが、Cyclesの方がリアルに表現されます。
Coat(コート)
表面にクリアコートやラッカー、車のクリア塗装のような光沢のある層を加えるための機能です。
クリア塗装をかけたような質感にしたいときに使います。(以下画像はCyclesレンダリング)
Weight
コーティングの強さ。コーティングの量や、薄さ、厚さとして調整できる。

Roughness
コーティングの表面の凹凸、粗さ

IOR
コーティング層の屈折率。光沢の見え方が変わります

Tint
コーティング層に色味を加えることができます。
右図はグラデーションに塗ってあったマテリアルの上に、さらに色をつけてコーティングしたところ

金属のコーティング
車のコーティングなどは金属のマテリアルの上にコーティングされています。
少し色を暗めにしてRoughness(粗さ)を少し高めてからコーティングすると金属コーティングを再現できます。
金属・非金属とも、ベースのRoughness(粗さ)があまりに低いと、コーティングしたときの違いが分かりづらくなります。

また、CyclesとEEVEEの違いも載せておきます。EEVEEの場合はライトプローブを設置しないと周囲のオブジェクトが映り込まなくなります。詳しくは以下の記事に書いています↓
Sheen(シーン)
布地や繊維のような微細な反射を表現します。
特に布やベルベットのような素材に有効で、エッジ部分にやわらかい光沢が出ます。また、ホコリや粉っぽさの表現にも応用できます。(以下画像はCyclesレンダリング)
Weight
効果の強さを調整します。(Roughness0.5のとき)1以上の強さにもできます。

Roughness
Sheenの粗さ。Roughness を上げると、繊維のツヤが面全体に広がり、白っぽい見た目になります。

Tint
Sheenの反射の色。繊維ツヤが、何色で光るかを決めます。黒の場合はツヤがなくなります。

EEVEEとCyclesの違い
Cyclesの方が物理的に正確に計算されリアルですが、EEVEEの方が軽いです。

Sheen BSDF(※Cycles専用)
SheenにはSheen BSDFという専用シェーダーもあります(Cycles専用)。専用シェーダーでは2つのシェーディングモデルを選べます。
- Ashikhmin
Blender 4.0 より前のバージョンで使われていた、クラシックなモデル。軽い。
- Microfiber(マイクロファイバー)
微小な繊維構造内での多重散乱をシミュレートするモデルです。物理的により正確。


使い方
Diffuse BSDF、Principled BSDFなどとMix Shaderで合成して使います。

Sheenを使って布の種類を表現する
Sheenを使ってサテン・シルク、ベルベットを表現してみました。自分なりの調整で正解というわけではないですので、各自が思う布の質感を表現してみてください。
サテン・シルク
メタリックを少しいれるとツヤツヤしたシルクのような質感に近づきます。SheenのWeightも5などかなり高めにして繊維ツヤとのコントラストを高めます。


ベルベット
メタリックを強くし、粗さも低めてギラギラ感を強めてみました。Normalにノイズテクスチャをつなぎ、少しもこもこ感を出しています。


Sheenを使った他の表現
埃(ほこり)
Sheenを使うことで表面についた埃を表現できます。機械とか家具などにつけるとリアルな感じになります。
右図はノイズテクスチャをSheenにつなげて埃を表現しています。コードがベタベタしそうなコントローラーです。

フルーツのブルーム(白っぽいところ)
ぶどうやプラムなどについてる表面の白っぽいところもSheenで表現できます。ラフネスよりも表面に付いてるって感じがしますね
このマテリアルについては以下の記事で書いています↓

CoatとSheenの併用
CoatとSheenは併用することができ、Principled BSDFの項目でも言いましたが、Coatの上にSheenが乗るような表現になります。
右図はメタリックなマテリアルにCoatでコーティングし、その上にSheenで埃をつけたようなオブジェクトです。

まとめ
Coat や Sheen は、上層の仕上げとして使われることが多いシェーダーです。
最後にこれらの効果を加えることで、マテリアルがぐっとリアルになり、現実の質感に近づくのがとても楽しいポイントです。
また、Sheen は本来「繊維のツヤ」として設計されていますが、工夫次第で、ほこりっぽさやフルーツのブルーム感などにも応用できる、汎用性のあるシェーディング要素です。
他にもいろいろ用途がありそうなので、それを見つけて工夫していくのもこのシェーダーの楽しみ方の一つだと思います。