Blenderでうちわを作ってみたときに、普通に作るとテクスチャの色がくすんで見えてしまうので、どうしたら素材の色そのまま、または光が当たったときでもなるべく鮮やかに出力できるか調べてみました。
宣伝や広告で使われる画像も商品パッケージをなるべく色そのままにきちんと出力できないと困りますよね。紙の印刷物は多いので、テクスチャを貼ったものを綺麗に見せたいときってわりとあると思います。
そんなときのために、製品写真用に追加された新しいトーンマッピング、Khronos PBR Neutralも紹介したいと思います。
今回は
- 鮮やかな色の素材の作り方
- それをそのままの色で出力する方法
- サムネや広告に使えるようにレンダリングして鮮やかな色を再現する方法
を自分なりに解説していこうと思います。
この記事は、Blenderでテクスチャ、または商品パッケージなどを鮮やかに出力する方法について書いた中級者向けの記事です。
難易度
作業の流れ
今回はBlender推しうちわを作りながら解説していきたいと思います。
ジオメトリーノードで作りました。文字素材もジオメトリーノードで作って、それを画像素材にしてあとからうちわにテクスチャで貼っていきます。
今回ジオメトリーノードやモデリングみたいな形を作る過程はやりません。マテリアル設定とかレンダリング設定などを解説していきます。

- 文字のマテリアル設定(素材作り①)
- 素材用の画像出力の設定(素材作り②)
- 画像をテクスチャとしてうちわに貼り、そのままの色で出力する方法
- サムネや広告に使えるように色を鮮やかにレンダリングする方法
という順番で作業していきます。
みなさんが作ってみるときは、何かモデリングで箱などつくって、画像素材を貼るなどしてやってみてください。
❶文字のマテリアル設定(素材作り①)
素材画像を作るための準備
- ライトを削除
- ライトはいりません。フラットな素材を作りたいので、ライトで影や明るさにムラができると困ります。削除してください。
- ワールド背景は真っ黒にする
- ワールドの背景も色があったりすると画像が少し明るくなってしまうので、色を真っ黒にしてStrengthを0にしておきましょう。

- 表示をDiffuse Colorのみにする
- シーンの光源を全部消したので、オブジェクトが真っ黒になってると思うのですが、右上のViewport Shading > Render PassでDiffuse Colorを選択すると、光が影響しない色の情報のみが表示されます。

- カメラは平行投影
- フラットに映すためにカメラのTypeをOrthographic(平行投影)にします。

- ビュー変換はStandard
- レンダープロパティの、Color Management > View TransformはStandardに設定します。マテリアルのカラーピッカーで選んだ色に一番近い色で出力されます。

マテリアル設定
マテリアル設定
色情報のみをビューポート上で表示しているし、レンダリングでも色情報のみを出力するので、Diffuse BSDFのBase Colorだけを変更していきます。(ラフネスを変更しても色は変化しなかったのでそのままでいいと思います。)
※principled BSDFだと反射や光沢など別の要素で色に影響を与えるので使用しない方がいいです。

CompositeでDifferenceノードを使うと、レンダー画面で見た色との違いの比較ができます。
右図では重ねてみたときに真っ黒(違いが0)なので同じ色がちゃんと出ているということです。

❷素材用の画像出力の設定(素材作り②)
今度は、この画像をテクスチャ素材として出力するために各種設定し、レンダリングします。
- レンダーエンジンはEEVEE
- 透過素材にする場合はTransparentにチェック
- 今回の文字素材は後ろは透過してほしいので、レンダープロパティのFilm > Transparentにチェックします。

- Diffuse Colorのパスにチェック
- Composite作業で色情報(Diffuse Color)のみを出力するパスを使いたいので、View Layerプロパティの Passes > Light > Diffuse > Colorにチェックしておいてください。
(※Diffuse Colorのみ出力するのかと思ったら、周囲からの光の影響を受けて数値はわりと変化するみたいです。周囲や同じノードで反射とか色を拡散させるような要素は削除する必要があります。)
- Composite作業で色情報(Diffuse Color)のみを出力するパスを使いたいので、View Layerプロパティの Passes > Light > Diffuse > Colorにチェックしておいてください。

- ファイル形式をOpenEXRにする
- File FormatをOpenEXRにします。透過画像ならColorはRGBAで設定。Color DepthはHalf(16bit)/Full(32bit)どちらか選ぶ。Halfでも割と綺麗です。容量などに余裕があるならFullでもいいんじゃないでしょうか

コンポジットで色情報のみ出力
Compositingでの作業に移動します。Render LayersからDiffCol(色情報のみ)のパスを出力Imageにつなぎ、Alphaを出力Alphaにつなぎます。

レンダリング
これでレンダリングすると色情報のみで透過した画像が出力されます。
ImageタグのSaveかSave As…で画像を保存します。
これで画像素材のexrファイルが作成できました。

❸画像をテクスチャとしてうちわに貼り、そのままの色で出力する方法
画像をテクスチャとして貼って、素材の色そのものとして出力するには、今までと同様なシーンの設定をします。(ライトを削除、Diffuse Colorのみのプレビュー、パスの出力など)
画像をテクスチャとして貼る際には、exrファイルなのでLinear Rec.709など色空間を適切に設定してください(exrファイルを読み込むと自動で設定してくれます)。ここでも他の光の影響がないようにDiffuse BSDFを使っています。

色空間ってなんだよって方はカラーマネジメントについて書いた記事があります↓
前回の画像出力同様にCompositeでDiffuse Colorのパスと透過があればAlphaをつないで出力します。今回は商品見本画像ということで、最終出力としてPNG画像で出してみました。
作業途中で色を劣化させることなく出力できていると思います。
色そのものを出すときはEmission(発光)を使う方も多く、自分もそっちを使うときもありますが、実際本当にカラーピッカーと同様の値が出ているか今回は検証していません。

❹サムネや広告に使えるように色を鮮やかにレンダリングする方法
今度は光などが当たっても、画像テクスチャを貼ったオブジェクトだったり、そのものの色をなるべく変更させないよう、綺麗にレンダリングする方法です。
今までは光を当てないようやっていましたが、光を当てて、なおかつ色を再現したいと思います。
シーン構成
普通に光を当てて、背景画像(PNG画像:Emissionつけています)をセットして、マテリアルも通常通りにつけています。
画像素材としてはexrファイルを使いますが、それ以外は、普通通りにラフネスやスペキュラーなどをつけてちゃんと質感を再現します。
※これは簡易的なセットです。必要最低限なライティングだけしている状態です。

Khronos PBR Neutral
ビュー変換
ポイントは、ビュー変換(View Transform)でKhronos PBR Neutralに変更することです。
Blender4.2あたりから出た新しいトーンマッピングです。

Khronos PBR Neutralは、PBR(物理ベースレンダリング)での色の正確さを保つために設計されたトーンマッピング方式です。
具体的には、マテリアルに設定されたsRGBのベースカラーが、グレースケール照明下で最終レンダリング画像のsRGB出力でも忠実に再現されるようにします。
この方式は、主に「製品写真」などの用途を想定していて、ライティングが適切で、HDR(非常に明るい)色は主にスペキュラー(光の反射)部分だけに限定されるようなシーンに向いています。
とBlenderマニュアルに書いてあります。以下のstandard, Filmic, Agxとの比較画像をご覧ください。

一目瞭然というか、Khronos PBR凄い綺麗に色が出てるなと思いました。特に背景がちゃんと表現できています。
Standard:背景の白飛びが酷い、光が当たった橙が黄色に変化してしまっている
Filmic:背景はかろうじて薄く出ているけど全体的に色がくすみ、橙色も変化してしまっている
Agx:Filmicの色の変化が改善されているけど、やはり彩度が落ちてしまっている
Khronos PBRはこういうフラットなテクスチャ画像がはってあるオブジェクト、背景に画像を使った場合にほんとにキレイに出力してくれます。色のくすみもなく、元の画像の色味を再現しつつ、光が当たった部分もきちんと明るくなっていて素晴らしい…!
まとめ
画像も色そのままの出力や、テクスチャ素材として出力するには工夫がいります。人によってやり方はいろいろあると思いますが、自分なりのやり方を解説してみました。
あとは、こういうフラットな画像っぽいオブジェクトを表現するのってBlenderは苦手というか、適切なトーンマッピングが存在していなかったこともあり、最近(ver4.2)追加されたKhronos PBR Neutral使うと簡単に製品画像みたいなの作れる!凄い!と思って紹介してみました。
みなさんも色がうまく再現できない、フラットな画像をレンダリングしたい、というときは試してみてください。