Blenderで動画やアニメを作る際に、たくさんの場面があるかと思います。タイトルや、エンディングや、中間のメインのシーンまで。使うオブジェクトやライティングも違い、わざわざ別のファイルで管理するとファイルの数も増えるし、同じオブジェクトを使いたいときもありますよね。
Scene(シーン)を使えば楽に管理でき、たくさんのシーンをまとめることができます。Sceneの使い方について解説します。
この記事は、BlenderのScene(シーン)の使い方について解説した中級者向けの記事です。
難易度
データブロックやリンクについての知識があると理解が進みますので、知らない方は以下の記事など良ければ読んでみてください。↓
BlenderにおけるScene(シーン)とは?
BlenderのSceneは、プロジェクト内に存在するひとつの「世界」や「セット」のようなものです。
それぞれのシーンは、以下のような要素を独立して持つことができます:
- モデリングオブジェクト(メッシュなど)
- カメラ
- ライト
- アニメーション
- ワールド設定(空の色など)
- コレクション構造
- レンダリング設定
※シーン作成には4つのモードがあり、モードによってどの要素を独立して持てるかは変わります。それは以下で解説しています。
なぜSceneを分けるのか?
動画を作るときに以下のような構成があるとします:
- タイトル画面(Scene_Title)
- 本編のシーン1(Scene_1)
- 本編のシーン2(Scene_2)
このようにシーンごとに分けると、各シーンを個別に管理できるため非常に便利です。
たとえば:
- タイトルでは「ロゴが回転するだけ」
- 本編では「キャラクターが登場して会話する」
それぞれ背景もライティングも違うなら、完全に別シーンにしておく方がスッキリ管理できます。
1つのBlenderファイルで複数シーンを作成する方法

実際に複数のシーンを作成してみます。
Sceneのメニューは上部メニュー、右側にあります。デフォルトでは「Scene」という名前がついています。
スザンヌなどオブジェクトを置き、レンダープロパティの設定で、このシーンのレンダーエンジンをCyclesに設定します。
Sceneドロップダウンから、新しいシーンを作成できます。

新しいシーンを作るときには4つの選択肢があります:
モード名 | 内容 |
---|---|
New | まっさらなシーン(カメラもライトもなし) |
Copy Settings | 設定(Scene設定など)だけをコピーして空のシーンを作成 |
Full Copy | すべてのオブジェクトを複製(コピー)して、新しいシーンを作成 |
Linked Copy | オブジェクトを共有(リンク)しながら、設定などをコピーして新しいシーンを作成 |
Newでシーン作成
Newでシーンを作成したらどのようなシーンが作成されるか

オブジェクト:何もない
カメラもライトも何もない空のシーンが作成されます。
設定:デフォルト
Scene設定も引き継がれないのでレンダーエンジンはデフォルトのEEVEEのままになっています。
何の情報も引き継がれないまま、0から新しいシーンを作成するときに使います
Copy Settingsでシーン作成
Copy Settingsでシーンを作成したらどのようなシーンが作成されるか

オブジェクト:何もない
カメラもライトも何もない空のシーンが作成されます。
設定:コピー
Scene設定は引き継がれているのでレンダーエンジンがCyclesになっています。

コピーされる設定
シーン設定がコピーされます。
シーンの設定とは、下の図で言うSceneデータブロックのプロパティで設定した値です。Render,Output,ViewLayer,Sceneのプロパティがコピーされるので出力設定も複製されているということですが、カメラのオブジェクトがないため、カメラやビューレイヤーのパスなどの設定は複製されていません。

Full Copyでシーン作成
Full Copyでシーンを作成したらどのようなシーンが作成されるか

オブジェクト:コピー
元のシーンにあったオブジェクトを全て複製コピーしてきます。(元のシーンとは別のオブジェクトなので001などがついた別名のオブジェクトです)
設定:コピー
Scene設定は引き継がれているのでレンダーエンジンがCyclesになっています。Worldもコピーされているので背景が同じものになっています。
Full CopyしたSceneデータ一覧

シンプルなシーンをFull Copyしたらファイルはどうなるのかの一覧です。(赤枠:元のシーン、青枠:Full Copyしたシーン)
- Worldも複製コピーされている
- Collection, Objectは中身のデータも複製コピーされている
- Camera, Lightも複製コピー
- Materialは共有(リンク)になっている
- Sceneは設定はコピーされているが別物(以後変更しても影響はない)
以下で、ジオメトリーノードやアニメーションのテストもやってみてるんですが、大体のものは複製コピーされているので自由に編集できそうですが、一部のものについてはリンクになっているので、データブロック名やユーザー数を見て、共有されてそうなものは変更に注意が必要です。
アニメーションの挙動

左図のようなシーンを作成してみます。
トーラス:上下移動のアニメ付き(NLAストリップ化)
コーン:XY平面移動のアニメ付き
これをFull Copyするとどうなるか見てみます

NLAストリップ化していないものは、アニメーションデータも別物として、新しく複製されたオブジェクト独自の付属アニメとして複製されています。
しかし、NLAストリップ化した方は、名前がTorusActionと、元のシーンのものと同じ名前がついています。
オブジェクトについてるNLAストリップは共有されています。

なので、一方でNLAストリップ内のアニメを編集すると、もう一方のアニメーションの内容も変更されます。
NLAストリップ化してないアニメーションは複製されるが、NLAストリップ化していると共有されている。
せっかく作っておいたアクションストリップなので共有されているんですね。内容を編集するときは注意。
ジオメトリノードの挙動

ジオメトリーノードでz軸に回転するアニメがついたようなオブジェクトを作成してみます。
このシーンをFull Copyすると

オブジェクトは別物として複製されますが、そこについてるジオメトリーノードは同一のものがついています。このノードに変更を加えると元のノードにも変更が加えられてしまいます。
Full Copyで気を付けること
アクションシーンと、日常のシーン、全く別々のシーンを作成したいとき、Full Copyはオブジェクトを別物として複製してくれて、背景やカメラも他のシーンと別に使えるのでよく使われます。しかし、そのオブジェクトが別物でも、そこについているマテリアル、ジオメトリーノード、アニメーション(NLAストリップ化)などがリンク(共有)されているため、同名のものを編集すればそれは変更されてしまうことに注意が必要です。
リンクしているデータブロックの名前、ユーザー数を見て、元のファイルと共有しているものがないかチェックしておいた方が良さそうです。
Linked Copyでシーン作成
Linked Copyでシーンを作成したらどのようなシーンが作成されるか

オブジェクト:共有
元のシーンにあったオブジェクトをリンク(共有)します。(同名・同一のオブジェクトです)
設定:コピー
Scene設定は引き継がれているのでレンダーエンジンがCyclesになっています。
Linked CopyしたSceneデータ一覧

シンプルなシーンをLinked Copyしたらファイルはどうなるのかの一覧です。(赤枠:元のシーン、青枠:Linked Copyしたシーン)
- ほぼすべてのデータが共有(リンク)になっている
- Sceneは設定はコピーされているが別物(以後変更しても影響はない)
Full Copyと違い、オブジェクトから背景にいたるほぼすべてのデータがリンク(共有)されているため、何か変更を加えると元のシーンにも影響が出ます。
Scene Collectionはそれぞれのシーンに独自なデータ
何かオブジェクトを追加してみる
Linked Copyしたシーン

Scene Collection直下にCube
Collection直下にIcosphere
を追加して、元のシーンへの影響を見てみる
元のシーン

Icosphereしか追加されていない
なぜScene Collection直下に追加したオブジェクトは元のシーンに影響しないのか?
Blenderでは各Scene は、それぞれ専用の Collection(トップレベルコレクション)を1つ持ちます。それが「Scene Collection」と呼ばれるもので、シーン内のオブジェクトの入り口(ルート)になります。これは他のシーンとは共有されず、完全に分離された独自の構成です。
元のシーンとリンクしていないので、持つオブジェクトのデータが反映されません。
Collectionは元のシーンとリンクしているデータブロックなので、そこに追加されたオブジェクトはきちんと反映されています。
Linked Copyの効率的な利用法
違うシーンだけど同一のスザンヌ

このように帽子をかぶった冬のスザンヌを出してみました。これがベースのシーンとします。
これをLinked Copyして別のシーンのスザンヌを作ってみます。

Linked Copyしたあと、違う帽子をかぶせるために、帽子コレクションを複製コピーして別の帽子にしていきます。

コレクションは、削除ではなくUnlinkすると、アウトライナーから非表示になります。(削除すると元のシーンのコレクションも消えます)
CollectionだけUnlinkの挙動がおかしい?
普通、データブロックのUnlinkって、使ってる側からUnlinkするんですけど(例:ObjectがMeshをUnlinkする)、Collection だけ「構造的にリンク元が明確」なので、被使用側からUnlink可能になっている。ってAIが言ってるんですが、なんか腑に落ちません…でもそういう挙動してるんですよね…。今はよくわかりません。そういうもんだと思うしか…。
Worldもシングルユーザー化して背景を秋の空にします。
元のシーンに変更を加えることなく、違うシーンを作成することができました。


さらに変更を加えていく。
やっぱりスザンヌの顔を作り込もう、と思い、元のシーンのスザンヌにモディファイアを適用したりマテリアルで細かく塗装するという変更を加えてみた。

ObjectやMeshがリンクされているので、変更が全部Linked Copyのシーンにも反映されています。

Linked Copyはこのように同じオブジェクトを使うけど、背景を変えたり、小物を変えたりするのに適しています。
また、レンダリング設定、メインカメラを別々に設定できるため、
- 複数のショットをテストする(別角度)
- レンダリングテスト
などに使えそうです。同じシーンを別角度から撮ってつなげたり?設定を変更してやり直さなくても、Linked Copyでたくさんレンダーの設定を試してみることが可能になります。
シーンを切り替えながら編集・レンダリング
Blenderでは、各シーンを切り替えて個別に編集し、レンダリングしておくことで、最終的に動画編集(VSE)でつなぎ合わせることもできます。
- 各シーンで必要なアニメーションを作る
- 必要ならVSE(Video Sequence Editor)にそれぞれレンダリングして読み込む
- タイトル → シーン1 → シーン2という流れを作る
動画編集用のシーンも作っておくと使いやすくなります。
まとめ
様々なシーンをとるときに使えるSceneの作成機能ですが、4種類のモードがあり、それぞれ目的に合った場合に使い分ける必要があります。
オブジェクト自体はあまり動かなくて、時間、背景や一部の小物、レンダー設定などが変更される場合はLinked Copy。
オブジェクトは同じものも使うけど、アニメーションや位置も変わるし、全く違うシーンになるという場合はFull Copyを使うのが良さそうです。
Linkやコピー、データブロックのつながりへの理解が深まるともっと効率的に使える方法がありそうですが、今のところこのくらいの使用法しかわかりません。