BlenderのUV展開のメソッドは結構たくさんあるんですが、どういうときにどうUV展開するのかいつも適当に決めてしまっているので、指標があればいいのにといつも思っていました。
と言いつつ、そもそもUV展開のメソッドについて、それぞれ何をしているのかあまりわかっていないのも問題だったので、それぞれのUV展開の特徴と、それを踏まえて、適切なUV展開の方法を探っていきたいと思います。
良いUV展開とは
そもそも、何をもって「良いUV展開」と言えるのか?
UV展開のメソッドを見ていく前に、まず、何がいいUV展開なのかがよくわからない。
結局テクスチャが貼れて、歪みがなく、自然に見えればOKですよね。でも何に気を付けたら自然なテクスチャが貼れるのか。
最終的にはテクスチャに拠ります。テクスチャによっては自動で展開したUV展開の方がいいこともあるかもしれません。じゃあ一体何を指標にすればいいのか?


このUV展開してグリッドを貼り付けたスザンヌを見てください。
どちらかというと、左(最初)の方がいいUV展開だという気がしませんか?
なぜなら、右の方は、耳のところのグリッドがいきなり大きくなっていて、全体としてグリッドの面積がぐちゃぐちゃだからです。
なんで面積がぐちゃぐちゃだとダメなのか?

さきほどの面積がぐちゃぐちゃな耳の部分を、実際テクスチャを貼ってみたところです。
革のテクスチャなんですが、耳のところだけテクスチャ画像が大きくてぼやけてしまっています。
UVの面積がちぐはぐしていると、テクスチャの解像度も不自然になります。
なので、UV展開したときに、元の面積を保ってほしいというモチベが存在するわけです。
さらに、レンガなど規則性のあるテクスチャを貼る場合には、元の3Dオブジェクトの角度のままUV展開してくれた方が綺麗にテクスチャを貼れます。
下の図を見てください。ある程度綺麗にUV展開されているはずですが、スザンヌの鼻の下あたりのレンガの溝の線が曲がってしまっています。これはUV展開したときに、元の3Dオブジェクトの角度と違う角度でマッピングされてしまっているからです。

というわけで、良いUV展開の指標として、
- 元の3Dオブジェクトの面積(=オブジェクト上の面と同じ比率でUVマップ上に配置)を保ってほしい
- 元の3Dオブジェクトの角度(=オブジェクト表面の方向と同じようにUV上で展開)を保ってほしい
というモチベが存在します。
もちろん、3Dから2Dにマッピングしているので、元の面積と角度を保ったままUV展開をすることは不可能です。何かを犠牲にしなければなりません。
というわけで、UV展開するときに、面積(の正確性)か角度(の正確性)をとるか、大体はこの究極の選択を迫られているということになります。
だからこそ、展開の目的や使うテクスチャに応じて、どちらを優先すべきかを見極める必要があるのです。
UV展開メソッドの種類

UV Editingで、Uを押すとUV展開メソッドがずらっと出てきます。
まず大別して
- 基本メソッド(Unwrap系)
- 自動展開ツール系
の二つに分けることができます。
基本メソッド(Unwrap系) | 自動展開ツール系 |
---|---|
Angle Based | Smart UV Project |
Conformal | Lightmap Pack |
Minimum Stretch | 各種プロジェクション(Cube / Cylinder / Project from View など) |
基本メソッド(Unwrap系)

自分でシームを入れることが必要。後はBlenderがメソッドに応じていい感じにUV展開してくれます。
基本的に普通テクスチャを作りたいときに使われるのはこちらのメソッド達。
理由としてはある程度面がつながっているから見た目を整えやすい、テクスチャを描きやすいなどがあると思います。
自動展開ツール系


自動展開ツール系は、シームを指定せずにBlenderが自動的にUV展開してくれる方法です。Smart UV Projectはその代表例で、複雑なオブジェクトでもすぐに展開できるというメリットがあります。
ただし、面のつながりやテクスチャの描きやすさは考慮されないため、テクスチャペイント向きではないこともあります。パーツが細かく分かれがちで、後で調整が必要な場合も多いです。
UV展開手法としては癖が強いので、ある程度用途は限られます。
メソッド | 特徴 | 用途 | 備考 |
---|---|---|---|
Smart UV Project | 自動パッキング | シーム入れたくないときに簡易的に自動展開 | Angle Limit以下の角度でもぶちぶち切れる |
Lightmap Pack | 面を独立配置 | ライトマップ | 継ぎ目だらけになる |
Projection系 | 簡易的な投影 | 平面・円柱・カメラ視点 | 必要な部分のみ使う |
まだ使ったことないですが、Unityにライトマップを持っていきたいときにLightmap Packを使ってライトマップ用UVを作れそうです。Projection系も、ある角度から見たときにテクスチャがきちんと見えればいいときなど、かなり限られた用途というか、目的意識があって使われるメソッドなので今回は割愛します。
基本メソッド(Unwrap系)の種類と特徴
よく使われるUV展開の基本メソッドの種類について見ていきます。

円柱を変形した左図のオブジェクトをUV展開して比較していきます。
最初に言ったように、面積と角度がどれほど元の3Dに沿っているかを指標として見ていきます。
比較方法

UV Editorで、上のOverlaysアイコンをクリックすると、UV Stretchを色で表示してくれる機能があります。
- Angle…角度
- Area…面積
元の3Dオブジェクトの角度や面積から乖離すればするほど、
濃い青 → 水色 → 黄色
のように色がついてくれます。
つまり、UV展開したときに、なるべく全体が濃い色になることを目指そうっていう感じです。
Angle Based

角度との乖離
元のオブジェクトとの角度の乖離を表示したUV展開図です。
ほぼ濃い青なので、元の角度がかなり再現されていていい感じですね。
Angle Basedはわりと面積重視でUV展開するんですが、角度もちゃんとバランスをとってくれて優秀なUV展開メソッドです。(Angle Basedという名前が誤解の元だと思いますが、別に角度重視ではないです。)

面積との乖離
若干くびれた部分が緑になっていて、面積の乖離があるようです。

でもグリッドも全然正方形に近い形なので許容範囲だと思います。
Conformal(等角)

角度の乖離
Conformalは角度の正確性重視なUV展開メソッドなので、さすがに角度の乖離は少ないです。

面積の乖離
角度を重視したぶん、一目瞭然ですが、面積がぐちゃぐちゃに歪みます。

境目の部分で、許容できないほどの面積の違いが出ています。これでは綺麗なテクスチャは貼れません。
Minimum Stretch

角度の乖離
Minimum Stretchは多分Blender4.3?くらいから導入された新しいUV展開メソッドで、Angle BasedとConformalのいいとこどりみたいなメソッドらしいです。
マニュアルを見ると、面積・角度とも歪みを最小限に抑えると書いてあります。
角度はあまり問題がないように見えます
面積の乖離

若干くびれた部分が歪んでいるみたいです。テクスチャを見ると、正方形が長方形のように伸びてしまっています。
比較結果
テクスチャを貼って見ても、結局Angle BasedかMinimum Stretchが良かったです。
やはり貼るテクスチャの柄や、オブジェクトの形によって結果は変わってくるので、実際やってみるしかないところもありますが、角度と面積、どちらを重視するかなどでまず試してみるUV展開メソッドを決めることはできるかもしれません。
傾向で言うと、
面積重視…解像度が均一になるので、ノイズや規則性のないパターンに向いている
角度重視…規則性のあるパターンを貼りやすい(面積が大きく崩れると無理だけど)。あとは顔などペイントするときに描きやすい。
メソッド名 | 特徴・用途 |
---|---|
Angle Based | 面積バランスを保ちつつ、視覚的に自然な展開を目指す。ノイズ系テクスチャに向く。 |
Conformal | ポリゴンの角度を重視。規則性のあるパターンやテクスチャに向く。(複雑な図形だと角度の正確性はなくなる) |
Minimum Stretch | UVの歪みを最小化。面積と角度の歪みを最小にしようと努力するメソッド |
まとめ
今回紹介したように、良いUV展開の基準には「面積を保つこと」と「角度を保つこと」があり、それぞれに応じて適した展開方法があります。
基本メソッド(Unwrap系)は自分でシームを入れて細かく調整したい場合に、自動展開ツール系は素早く全体を展開したい場合に向いています。
UV展開は「どんなテクスチャをどんなオブジェクトに貼りたいか」によって、選ぶべきメソッドが変わります。
よく有機的なものはAngle Based、機械的で直線的なものはConformalと言われますが、どうしてそう言われているのかも、それぞれのメソッドの特徴を知ることでより理解が深まると思います。
新たに追加されたMinimum Stretchのメソッドと合わせて、角度・面積、どちらを保った方がより綺麗なテクスチャが貼れるかを考えてUV展開について考えてみると、より効率よくUV展開できると思います。