Blenderを使ったレンダリングは、非常に柔軟で強力な機能が備わっています。特に、複数の要素を個別にレンダリングしてから合成するビューレイヤーは、アニメーションやシーンの複雑さに応じて作業を効率化するために欠かせないツールです。
この記事では、ビューレイヤーを使ったレンダリングの基本的な操作方法と、効果的に活用するためのポイントを、自分の学習も兼ねて解説していこうと思います。
この記事は、Blenderのビューレイヤーを使ったレンダリングについて基礎を知りたい中級者向けの記事です。
難易度
ビューレイヤーを使ってできること
Blenderのビューレイヤー機能は、シーンを複数のレイヤーに分割し、それぞれのレイヤーを独立してレンダリングすることができるツールです。これにより、シーン内の特定のオブジェクトやエフェクトを個別に操作し、最終的に後処理(コンポジット)で合成することが可能になります。
たとえば、背景とキャラクターを別々にレンダリングしてから、コンポジットで一つの映像として仕上げることができます。

ビューレイヤーを使うことで、次のようなメリットがあります:
- パフォーマンスの向上 – 必要な部分のみを個別にレンダリングすることで、レンダリング時間を短縮できます。
- 柔軟な合成 – コンポジットノードで個別のビューレイヤーを合成することで、細かな調整が可能になります。
- エラー処理の簡素化 – シーンの一部に問題があっても、他のビューレイヤーには影響を与えずに作業を進めることができます。
ただ、合成するときに影をどうするか、背景、マスク操作など、わりと難しい技術が求められます。早く使いこなせるようになりたい…。
ビューレイヤーを作成する

ビューレイヤーを作成するには
※背景 オブジェクト1 オブジェクト2…などわけられるようにそれぞれCollectionにまとめておきます。
アウトライナーの右上にView Layerのメニューがあるので、新規作成のアイコンでレイヤーを作ります。
新規作成のメニュー
New…Collectionは全部可視化されている状態、View Layerプロパティの設定はひきつがない。
Copy Settings…Collectionの状態、View Layerプロパティの設定をひきつぐ
Blank…Collectionは全部不可視化、View Layerプロパティの設定はひきつがない
大体はNewやCopy Settingsを使って新規作成することが多いです。
ビューレイヤーは別々のものではない。
ビューレイヤーはリンクされている同一のシーンのものですので、メッシュやアニメーション、他の設定はすべて共有されています。例えば上記の例で言うと、手のレイヤーでりんごオブジェクトを消したりすると、りんごのビューレイヤーでも消えています。
個別に変更できるのはアウトライナーで設定できる、可視・不可視、など右にアイコンで出てる見え方の設定と、ビューレイヤープロパティの設定だけです。
ビューレイヤーを重ねるための準備

レイヤーを重ねやすいように背景を透過させる
レンダープロパティの下の方にあるFilmからパネルを開いてTransparentにチェックをいれます。(EEVEEもCyclesも同様な場所にある)
背景をhdrなどで作っていて、透過したらなくなってしまう場合は別に画像や動画で用意してコンポジットで合成するか何か工夫が必要になると思います。
アウトライナーでの設定

コレクション単位で、オブジェクトをそのレイヤーで表示するかしないかなどの設定ができます。
アウトライナーの右上にあるメニューを開いて、使用するアイコンを選択できます。
左から
チェック…全てのアイコンを一括でON/OFFできる。
三角矢印…OFFにするとビューポートで選択できなくなる。作業中に選択したくない場合などに使う。
目…OFFにすると一時的に不可視化。存在はしている。レンダリングでは表示される。
ディスプレイ…OFFにするとビューポートで不可視化。レンダリングでは表示される。物理演算なども無視される。
カメラ…OFFにするとレンダリングされなくなる。
四角に円…そのオブジェクトの形にHoldout(切り抜き)。マスクです。切り抜いたところは透明になる。
跳ね返り矢印…影、環境光などの間接的な効果だけを表示する。(4.3でもEEVEEでは使えない)
ビューレイヤー使用例

例えばりんごのビューレイヤーですが、
●背景はチェックを外して全部不可視化
●手とりんごは重なっているので、手の前面が重なったところをマスクするため手のコレクションにマスクのアイコンをつけています。

落とした影も表示させたい場合
Cycles
背景のコレクションに落ちた影も表示させたいので、りんごと手のコレクションも可視化させ、間接効果の矢印アイコンを選択します。
こうすることでりんごや手は表示されませんが、りんごや手からの影(周囲への色や光があればそれも)がそのまま表示されます。
※間接効果の設定はEEVEEでは使えません

EEVEE
●マスクの設定を使う
(他にもコンポジットでマスクする方法などもあります。)
大気などの細かいものや発光体、映り込みの表現などEEVEEではうまく表現するのが難しいものもありますので、EEVEEを使うときは注意が必要です。
コンポジットで合成
Compositeの画面に行き、レンダーレイヤーノードで各ビューレイヤーを出力して合成します。合成する方法はいろいろありますが、一般的な方法を紹介します。

Alpha Overノードで合成
透過の情報を使って合成できます。手のAlphaをAlpha OverのFacにつなぎ、下のImageに上に重ねる方の画像、上のImageに重ねたら下になる画像をつなぎます。

今度はその上にりんごも重ねていきます。
他にも
- Mix ノード
- Z Combine ノード
で重ねることができます。Z CombineノードはZ深度のパスを使って重ねるので、二つのオブジェクトが交差していてもちゃんと合成できますが、影とか発光物、複数のものを近くで重ねるとうまくいかなかったりする…

Z Combineノードを使ってみた例。りんごはマスクで切り抜かなくてもZ深度を読み取ってちゃんと合成してくれた。
背景の合成はうまくいかなかった。これが安定して使えるようになったらいいのに。
まとめ
複雑なシーンやレンダリングに時間がかかるシーン、またはいろんな画像や動画を組み合わせるような動画編集にも使える便利な機能なのでぜひ使ってみてください。