Blenderでリアルな質感を再現しようとすると、光沢のコントロールが大事になってきます。陶器なのかプラスチックなのか、光沢の強さを変えることで物の質感は大きく違ってきます。

Blenderでこの光沢の強さ(光の反射の強さ)を変えるのはSpecular(スペキュラー)の値です。光沢の形についてはラフネスで、メタリックも光沢の強さを出しますが、金属の質感に関わるところで、非金属の質感には向いていません。
Specularの調整は非金属の質感に大きく影響します。(Tintなど一部は金属の表現にも影響します)
この記事は、Blenderのマテリアルノードの「Specular」について詳しく知りたい初心者~中級者向けの記事です。
難易度
Specular(スペキュラー)とは?
Specularとは鏡面反射
Specularとは鏡面反射部分のことです。Diffuse(拡散反射)とは違って、水面に像がはっきり映り込むような綺麗な反射です。
私たちが光沢と呼ぶのは、鏡面反射して周囲が映り込んだり、光のハイライトが強く見えたときです。
鏡面反射はつるつるした素材、ビン、金属、陶器、プラスチック、いろいろな素材で起こっています。一番きれいな鏡面反射が起こっているのは鏡です。


鏡面反射の条件
鏡面反射の条件は、材質の表面がつるつるしていること、光の反射が「入射角 = 反射角」になっていることが重要です。

例えば右図の左側で、水面が平坦なときは綺麗に白鳥の像を映していますが、右側のさざ波がたった水面では、フラミンゴの像が崩れてしまっています。
光の反射が揃っていればいるほど綺麗な鏡面反射が得られます。


泥のような鏡面反射しそうにない素材でも、頑張って磨けばつるつるになって周囲の光や風景が映り込むくらいピカピカになりますね。素材の表面の粗さ(ラフネス)は光沢にとってとても重要な要素です。
Principled BSDF と Specular BSDF の違い
SpecularはSpecular BSDFノードと、Principled BSDFノードのSpecularタブの中にメニューがあります。
※Blender4.0か4.1くらいからPrincipled BSDFノードのSpecularの項目が変わりましたので旧バージョンをお使いの方は注意してください。
Principled BSDFのSpecular
PBR(物理ベースレンダリング)の「メタリック/ラフネス」ワークフローを採用しています。これにより、金属と非金属の特性を明確に区別し、物理的に正確なマテリアル表現が可能となっています。
Specularのパラメーターは非金属の光沢の強さ(反射率)を制御しますが、金属の値が強すぎる場合は無視されます。
Metallicを上げ、金属の質感にすると、勝手に光の反射が強くなり、Specularでの設定値は無視されます。

Anisotropic(鏡面反射の異方性)を調節できるので表現できる質感の幅が広がります。(金属にも影響します)
磨かれた金属や細い筋が入ったような物体にできる、ある方向に筋のように広がる光も表現できる。(Cyclesのみ)


Specular BSDF
Specular BSDF ノードは、EEVEE 専用(Cyclesで使えません)の軽量ノードで、反射の強さや色を自分で指定する「スペキュラーワークフロー」に基づいています。これは Principled BSDF のような金属/非金属の区別をしないため、単純化されたマテリアル設定に向いています。
ただし、制御できるパラメータも少なく、物理的に正確ではない場合もあるため、リアルさよりも軽さや簡便さを重視するシーンで使われます。
使ってみると、Fresnelのように、物体の外側が明るくなりがちのように感じました。

Clear CoatやEmissionも使えるので、強い光や手軽にキラキラさせるにはいいかもしれません。Principledノードのキラキラセットを集めたノードっていう感じですかね。

Specularの入力ソケットにはRGBなど色を与えると、Tintの色として扱えるようです。あと単にValue(値)を入れても鏡面反射が強くなったりします。


リアルなものを作りたいならPrincipled BSDF一択。アニメシェーダーで手軽に光沢をコントロール(髪の毛の光沢の形、位置を制御)するときにSpecularBSDFを使うこともありました。
今回はリアルなマテリアルを作るため、Principled BSDFのSpecularのパラメータについてしか解説しません
Principled BSDF Specular 各パラメーターについて
以下のパラメータがあります。
- Distribution(分布の種類)
- IOR Level(屈折率の強さ)
- Tint(鏡面反射の色)
- Anisotropic(鏡面反射の異方性)、Anisotropic Rotation(鏡面反射の異方性の回転)、Tangent(異方性の方向)
❶Distribution
使用するマイクロファセット(細かい微小面の凹凸)分布の種類
- GGX
- 処理が高速だけど物理的な正確さは劣る。また複数回の反射は考慮しないので暗くなりがち。
- Multiscatter GGX
- 微細な凹凸の複数の反射を計算してよりリアルな結果を得ます。

IORをものすごく高くするとやっと明暗の差が出るくらい。ほぼ変化ないので、処理の負荷に耐えられるならデフォルトのMultiscatter GGXで作業すればいいと思います。

❷IOR Level
まずIOR(Index of Refraction / 屈折率)とは、物質が光をどれだけ屈折させるかを表す値です。
IORが1より小さい値は自然界にはほぼ存在しません。(真空中での光の進み方が一番早い)

物質によってIORは決まっている

物質によって光の屈折率は決まっています。
以下のサイトなどに物質の屈折率のリストがあります。
- 真空(空気)…1.0(光が直進する)
- 水…1.33
- ガラス…1.5(少し歪む)
- ダイヤモンド…2.4(屈折率が高いと何回も内部で反射し、外に出てくる光も多くなる)

屈折率が高いほど反射する光が多くなり強くなります。
IOR Levelは簡単に反射光の強さを変更できる
IOR Levelはさきほど設定したIORの値に基づいて、反射光の強さを調節できます。なので物質に応じたIORをまずきちんと設定することが大切になります。

IOR Level:0.5(デフォルト値)はニュートラルで何も変化させません。IORに基づいた反射光の強さそのままを出力します。0にすると光沢は消え、数値を大きくすると光沢が強くなっていきます。
※IOR Levelは、フレネル反射の正面入射反射率(F0)に影響するパラメータで、実際にはIORから計算されたF0値を調整しています。詳しくは以下の記事で書きました。
❸Tint
鏡面および金属の反射に対する色味の調整です。
- 非金属の場合
正面から見た反射の色を変更することで、アーティスティックな表現が可能になります。
ただし、斜めから見た側の反射は白いままです。
※現実の非金属では、鏡面反射は完全に白です。

- 金属の場合
反射の「縁」に色味がつくことで、金や銅などのような複雑なIORを模擬的に再現します。

❹Anisotropic、Anisotropic Rotation、Tangent
Anisotropic、Anisotropic Rotation、Tangentは、異方性反射をコントロールするパラメータです。
※これらのパラメーターはCyclesでしか使えません
異方性反射は、表面の微細な凹凸(マイクロファセット)の並び方が一方向に偏っている場合に発生します。
- CDやDVDの表面 → ディスクの溝に沿って光が引き伸ばされる。
- ヘアライン加工の金属 → 細かい溝が一定方向に並んでいるため、反射がその方向に引き伸ばされる。
- ブラシ仕上げの金属 → 磨きの方向に沿って光が伸びる。

Anisotropic(鏡面反射の異方性)
異方性の強さを設定します。
- 値を大きくするほど、ハイライト(反射の光のスジ)が長く引き伸ばされ、物体表面の接線方向(tangent)に沿って伸びます。
- 値がマイナスになると、ハイライトは接線と垂直な方向に引き伸ばされます。

値を-1にするのもやってみましたが、0とあまり変わらなかったです…。
Anisotropic Rotation(異方性の回転)
異方性の向き(ハイライトが伸びる方向)を回転させることができます。
- 0~1の範囲で指定し、1.0で一周(360°)します。
- Glossy BSDFノードと比べて、ハイライトの方向が90°ずれているため、同じ方向にしたければ 0.25 を足すと補正できます。

Tangent
異方性の接線方向をコントロールする


Tangent入力ソケットにVectorやテクスチャをつなげると異方性の方向をコントロールできます。
まとめ
Specularの各パラメーターは、主に光沢や鏡面反射の制御に使用されますが、透過物、金属など他のパラメーターにも影響し、材質の再現に重要な役割を果たします。
適切に調整することで、リアルな金属やプラスチック、ガラスなどのマテリアルを作ることができます。ぜひ、いろいろな設定を試して、自分の目指す質感を再現してみてください。