この記事では、Blenderのビデオ編集において、マスクを作成する方法と、マスクを利用した加工やエフェクトについて解説します。ビデオ編集におけるマスクは、特定のエリアを隠したり、エフェクトを適用する範囲を制限するために非常に便利なツールです。
Blenderのシーケンサーやコンポジティングノードを使用して、どのようにマスクを作り、編集に組み込むことができるのかを説明します。
この記事は、Blenderのビデオ編集において、マスクを作成する方法・マスクを利用した加工、エフェクトについて知りたい中級者向けの記事です。
難易度
Blenderは、主に3Dモデリングやアニメーションで知られていますが、実はビデオ編集機能も備えており、ビデオシーケンスエディタ(VSE)を使うことで、動画編集が可能です。
この編集機能では、基本的なカットやトランジションだけでなく、エフェクトやテキストの追加、カラーグレーディング、そしてマスクを使った細かな編集ができます。Blenderのビデオ編集機能は、3Dアニメーションと統合されているため、他の動画編集ソフトウェアとは一味違う、3Dアニメーションと映像をシームレスに組み合わせた編集が可能です。
ビデオ編集のマスクとは?
ビデオ編集のマスクとは、映像の一部分を隠したり、特定のエリアにエフェクトを適用するための手法です。簡単に言えば、画像や動画の「切り抜き」や「ぼかし」を行うためのツールです。マスクを使うと、特定の部分だけを変更したり、反対にその部分を隠すことができます。
Blenderのビデオシーケンスエディタ(VSE)やコンポジティングノードを使えば、シンプルな形や自由な形のマスクを作成でき、例えば、人物の顔にぼかしをかける、特定のオブジェクトに色調整を加えるなどの編集が可能になります。
マスク作成画面
マスクを作成するには、Blender上部のメインのメニューの中の
VFX > Masking
という画面に入って作成します。(※ここで作ったマスクはコンポジターなどでも使えます。)

上部メニューにないときは右端の+のプルダウンメニューから選択してください。


左図がMaskingのエディタのデフォルトの画面です。
主に使うのは左下のmovie clip editorというウィンドウです。

まずOpenを押してマスクを使いたいmovieや画像を選択します。(マスクを作成する場所がわかりやすいようにするためです)

マスクを新規作成する
マスクを新規作成する場合、Movie Clipや画像ファイルを読み込んだところの右にあるマスクアイコン隣のNewをクリックします。

まだマスクとしての具体的な形は作成されていません。

新規作成のアイコンをクリックすれば何個でも作ることができ、ここで作ったマスクはデータブロックとして作成されています。
後にビデオ編集でマスクモディファイアとして使うときはデータブロック単位で適用されます。
データブロックについてはこちらの記事を書いています↓
マスクの形を作成する

マスクを作成するには、マスク作成ウィンドウ内のAddメニューを押してcircleやsquareを作ってから編集するか、
Ctrl + Cを押しながらマウスでクリックしていくと形が作れます。
AddメニューはShift + Aからでも出せます
形を追加したのに見えない?
CircleやSquareを追加した場合、最初はムービークリップの左下に小さく追加されています。

操作はオブジェクトと同様です。
G …移動
S …拡大縮小
R …回転

黒丸の●ポイントを選択し右クリックするとハンドルタイプを選択できたり、セグメントの編集ができます
マスクレイヤー
マスクはレイヤー単位で管理することができます。
右側のMaskタブを開くと、Mask SettingsやMask Layersなどのメニューが開きます。
現在この三つのマスクはMaskLayerという一つのレイヤーの中に入っています。

マスクレイヤーの下のメニュー、OpacityやBlendなどの効果がレイヤー単位でかかるので、例えば反転したいマスクはレイヤーにまとめておく、などの使い方ができます。
マスクレイヤーの追加

マスクレイヤー画面右の+でレイヤーを追加できます。
マスクレイヤーを選択してからマスクの形を作成すると、そのマスクはそのレイヤーに属することになります。
マスクの表示方法を変更する
Mask Display
右上のMask Displayでマスクの表示を切り替えることができます。
- Splineはパスのベジェ曲線を表示
- Overlayは白黒(白が可視、黒が不可視)表示
この組み合わせで画面を表示できます。

マスクの合成
マスクの合成はBlendでモードを切り替えることができます。
マスクレイヤーごとの値を「足す」「引く」「乗算」などで合成できます。

feather(グラデーションぼかし)
周囲をぼかすグラデーションのフェザーがついたマスクを作ることもできます。左のメニューにあるScale Featherや、Aでポイントを全選択したあとAlt + Sでフェザーを作れます。(内側にしか作れないときは、Maskメニューや、左のメニューにもあるSwitch Directionでフェザーが出る方向を変えることができます)

ビデオ編集画面でマスクを適用する
BlenderのVideo Editing画面でマスクを適用させる方法は大きく分けて二種類あります。
- Adjustment LayerにMask Modifierを使う(複数のストリップにマスク)
- ストリップに直接Mask Modifierを使う(1つのストリップにマスク)
❶Adjustment LayerにMask Modifierを使う
Adjustment Layerはその下にあるすべての映像や画像に一括でエフェクトを適用できる機能です。
Addからプルダウンメニューを開きAdjustment Layerを開くことができます。

マスクのモディファイアをつける
Adjustment Layerストリップを選択し、右側メニューのModifiersタブを開いてMaskのModifierを追加します。

Maskの形状に
- Strip
- Mask
のどちらかを選べます。
Maskを選択すると、作ったMaskを使うことができます。(データブロック単位なので、レイヤーにわけておいたマスクが合体されています。)

Mask Time
マスクアニメーションの再生タイミングについての設定
- Relative…ストリップスタート時から再生される
- Absolute…シーンのフレームと同じタイミングで再生される
マスク部分にエフェクトをかける

Gaussian Blurをかける
Adjustment Layerストリップの先頭にバーを合わせ、
Add > Effect Strip > Gaussian Blur
でブラーのストリップを追加します。
Gaussian Blurストリップの効果の数値を上げていくとブラーがかかります。
CompositingのBlendモードがCrossのままだと切り取られてしまうので、背景をちゃんと表示したい場合は、BlendモードをAlpha Overにします。

❷ストリップに直接Mask Modifierを使う
ストリップに直接Mask Modifierを適用していきます。
マスクを適用させたいストリップを選択し、そこにモディファイアを適用してMaskを選択します。
Mask Input TypeをMaskにして、作成したマスクを選択します。

マスクを使ったエフェクト・加工
動画を文字の形に切り取る
動画にマスクを適用させる際、テキストストリップをMaskに設定することで、文字の形に切り抜くことができます。

マスクしたところを非表示にする(マスクの反転)

Maskingのエディタに戻って、反転したいマスクがあるレイヤーを選択し、Opacity横の反転のアイコンをクリックします。
白黒の値が反転して、表示・非表示が反転します。

マスクを使ったアニメーション
マスクを使ったアニメーションや、マスク自体をアニメーションさせる方法は以下の記事に書きましたので参考にしてみてください↓