今回は実際に爆発のアニメーションを1から描いてみて、その中で気づいたことや、作画するときに意識したポイントをまとめてみます。
※ちなみに、自分は3DCGで使うエフェクトのために2Dアニメーションを勉強しているだけなので、ここで紹介する方法がプロのアニメーターの一般的な作画方法というわけではありません。あくまで、実際に自分で爆発を描いてみて「こう考えると作りやすかった」という内容です。
今回作ったのは、右の動画のような爆発アニメーションです。
爆発のような複雑なエフェクトをいきなり綺麗に描こうとすると、どのタイミングで何が起こるのか分からなくなりやすいので、今回はまず簡単なラフを描いて、爆発の中で何が・いつ・どのくらいの速さで動くのかを決めていきました。
その後、実際に動かしてみながらタイミングや速度を調整し、最後に炎や煙などの形を作り込んでいきます。
この記事では、
- ラフで爆発全体のタイミングを決める
- それぞれの現象に合わせて動く速さを変える
- 実際に動かしてみてタイミングを調整する
- 最後に炎や煙の形を作り込む
という流れで、今回の爆発アニメーションを作っていきます。
全体を説明したチュートリアル動画もありますが、詳細はあまり説明しきれてないので、一回見てから、細かいところは記事を読んでみてください。
爆発の流れ
火のアニメーション基礎の記事で、ある程度「燃焼」や「爆発」の流れや仕組みを解説したんですが、もう一度簡単にざっと説明します。
爆発など、大規模な炎になると、周囲の空気を大量に巻き込みながら上昇します。
すると小さな渦同士が成長・合体し、巨大な循環流が形成されます。
外側から空気を吸い込み(特に柱状の部分で強く巻き込まれ)、内部で上昇し、上空で広がる流れができるため、炎はキノコ雲やブロッコリーのような形に成長していきます。

なぜこのような形になるのか
右図のように、密度差や浮力のある二つの流体層の境界では、マッシュルームのような形を作りながら互いに入り込むことがあります。これをレイリー・テイラー不安定性といいます。
炎や爆発で発生した高温のガスは、周囲の冷たい空気よりも密度が低いため上昇します。このとき、上昇する高温ガスと周囲の空気の境界では、レイリー・テイラー不安定性によってマッシュルーム状の構造が現れることがあります。
さらに、構造の境界面では流れる速さの違いによってケルビン・ヘルムホルツ不安定性が発生し、傘の部分に見られるモコモコした渦状の形が作られると考えられています。
※あとで形について描きますが、このようなキノコの形の雲をかっこよく描くのは難しいので、あまりこだわらずに、左右非対称なかっこいい形を目指して描いていった方がいいです。
爆発作画について
ラフを描いてタイミングを決める
爆発作画などの複雑なエフェクトでは、最初にラフを描いて、「何がいつ起こるのか」と「それがどのくらいの速さで動くのか」を決めてから作画を始めると作りやすくなります。
(というか、描き慣れたアニメーターでもない限り、いきなり爆発アニメを下書きしていくのはかなり難しいと思います…。)
初心者は、まずラフで一度、爆発全体の時間の流れを作ってみるのがおすすめです。
まずは簡単なラフで、
- 着火のタイミング
- 爆風による煙が出るタイミング
- 物が吹き飛ぶタイミング
- 衝撃波が出るタイミング
- 炎が大きくなるタイミング
- 黒煙に変化するタイミング
- 煙が消失するタイミング
などを決めていきます。
最初から完璧に決める必要はありません。実際に動かしてみると「ここはもっと速くしたい」「ここはもう少し間を取りたい」といった部分が出てくるので、まずはなんとなく決めてしまいます。
今回、アニメーションを作成するために描いたラフを下に載せています。
このラフで大事なのは、爆発の形を完成させることではありません。
- 爆発によって起こるさまざまな現象が、いつ起こるのか
- それぞれの動きが、どのくらいの速さで進むのか
- どこを速く、どこを遅く動かすのか
といった、タイミングと動きのメリハリをあらかじめ決めておくことです。
実際、この段階では爆発の形はかなり適当です。今回も後からかなり修正しています。
描き慣れた人なら、ラフの段階で形までしっかり作り込めると思いますが、初心者の場合は、まず「いつ・何が・どう動くか」を決めることを優先した方が作りやすいと思います。
もし最初からいろいろな要素を描くのが難しければ、さらに要素を減らしても構いません。
例えば、メインの炎がどう大きくなって、どのように黒煙へ変化するのか
だけを最初にラフで作ってみるのもいいと思います。物が吹き飛んだり、衝撃波が出たりするのは、あくまで追加の要素です。最初から全部を考えなくても大丈夫です。
- フレーム1~24
爆発前の間です。爆発前にある程度何もない間があった方が変化が分かりやすいです。 - フレーム24
着火・もしくは着弾のタイミング。小さい光が出ます - フレーム27
インパクトフレームを1コマ入れています。一瞬だけ全体の明暗を変化させることで、爆発が始まった瞬間のインパクトを出しています。 - フレーム28
爆風による煙が出たり、物が吹き飛び始めます。(煙は最初は勢いよく伸び、その後徐々に速度を落としながら消失。物が吹き飛ぶ場合は、最初に勢いよく飛び上がって放物線を描きながら落ちてもいいし、そのまま画面外まで吹き飛ばしてもOK。) - フレーム29
爆風による衝撃波が周囲に広がり始めます(速いスピードで広がる) - フレーム31
局所的な爆発によって、煙が尾を引きながら破片が飛散していきます。
爆発の作画でよく見る、左右に細長く伸びた煙が、放物線を描くように飛んでいく動きです。 - フレーム28~49くらい
炎が大きくなっていきます。39フレームくらいまでは炎がそのまま大きく広がる。それ以降は、周囲の空気を巻き込みながら、回転するように大きくなっていくイメージ。 - フレーム49くらい
炎が黒煙に変化していきます。爆発直後の勢いが徐々に弱くなり、炎から煙へ移っていく段階です。 - フレーム58~86くらい
動きが極端に遅くなっていきます。爆発直後のような勢いがなくなり、煙がゆっくりと上昇・拡散していくイメージ。 - フレーム89~
煙が風に流されて、消失していきます。

爆発の中でも、動きの速さはそれぞれ違う
爆発全体を単純に「最初は速く、後半は遅く」と考えるだけではなく、爆発の中にある一つ一つの現象によって、動く速さを変えることも重要です。
今回の爆発では、27~31フレームあたりは1コマ打ちで、いろいろなものを素早く動かしています。
自分は今回は、ぼこっと炎が持ち上がるような感じを出したかったので、33、35フレームでは少し速度を落としています。
その後、37フレームくらいからは再び1コマ打ちにして、もこもこと炎が上昇していくようにしました。
これは少しリアル寄りの動きを意識したためです。
デフォルメされた爆発では、ここをあまり減速させず、最初の炎を一気に成長させて勢いを出すことも多いと思います。
重要なのは、「爆発だから全部速くする」のではなく、それぞれの動きに合った速度を考えることです。
例えば、
- 爆風で物が吹き飛ぶ → 一気に速く動く
- 衝撃波が広がる → 非常に速く広がる
- 局所的な爆発で破片が飛散する → 放物線を描く速度
- 炎が大きくなる → 最初は速く、徐々に遅くなる
- 煙が上昇する → 徐々にゆっくりになる
というように、それぞれ違った速度を持っています。
特に、炎が大きくなった後に黒煙へ変化し、そこから動きがゆっくりになっていく部分は重要です。
最初に一気に炎を大きくして勢いを出し、その後に動きをどんどん遅くしていくことで、爆発の「速い→遅い」という大きなメリハリができます。
多くの爆発アニメでは、このように動きがゆっくりになったところでシーンが切り替わることも多いと思います。
今回はせっかくなので、その後の煙が消えるところまで描いてみました。
※実際の爆発では黒煙はかなり長く残るため、短時間で完全に消失させるにはかなり強い風などが必要になります。ここはあくまでアニメーションとして見せるための表現です。
また、アニメの爆発はかなりデフォルメされているので、実際の現象よりも燃焼や黒煙への変化を速く見せることが多いように感じます。
あまりゆっくり変化させると、爆発の勢いがなくなってしまうからです。
作画するときも、速い部分は1コマごとに絵を変えて素早く動かし、遅い部分では4~5コマほど間隔を空けながら、徐々に動きを遅くしていくと、動きのメリハリを作りやすくなります。
テストして動きを調整する
ラフができたら、実際に動かしてみます。
再生してみて、もっと速くしたい、遅くしたいと思った場所などでフレームを移動・追加・削除して調整します。
特に注意したいのが、フレーム31の局所的な爆発による飛散です。ここでは煙を尾を引きながら破片が飛んでいくため、放物線を描いて動かします。
物体が上に上がっていくときは徐々に速度が落ち、頂点付近で最も遅くなり、その後落下するときには再び速度が上がっていきます。
これは、炎が大きくなっていく動きや、煙がゆっくり上昇していく動きとは違った速度変化になります。
つまり、爆発の中には、速い動きもあれば、遅い動きもあり、同じ爆発の中でもそれぞれ違った速度変化をしています。
ここを意識すると、爆発全体にメリハリが出てきます。
「何がこの動きを生んでいるのか」を考える
こうした速度を決めるときは、単純に「ここは速くしよう」「ここは遅くしよう」と考えるだけでなく、この物体を動かしているもの(エネルギー)は何なのか?と考えてみると分かりやすくなります。
例えば、
- 爆風によって吹き飛ばされている → 一瞬の強い爆風によって、最初は強い勢いで動く
- 局所的な爆発で飛び出している → 一瞬の爆発による強い力で上昇し、その後は重力によって落下する → 放物線を描く動きになる
- 炎が上昇している → 上昇気流によって動く
- 燃焼が弱くなっている → 爆発直後のような勢いや上昇気流がなくなっていく
- 煙が風に流されている → 風の方向へゆっくり移動する
というように、その動きを生んでいる原因によって、動き方も変わります。動き方も変わります。
もちろん、アニメーションでは実際の物理現象を完全に再現する必要はありません。
むしろデフォルメして、現実よりも速くしたり、極端に遅くしたりすることもあります。
ただ、何がこの動きを生んでいるのか?を意識しておくと、適当に動かすよりも、速くするところ・遅くするところを決めやすくなります。
爆発アニメーションを作るときは、最初からすべてを綺麗に描こうとするのではなく、まずラフで何が・いつ・どのくらいの速さで動くのかを作ってみてください。
形を修正する
ある程度ラフでタイミングを決めたら、次は爆発の形を作り込んでいきます。
ここでは、煙や炎などの形を整えるときに意識したポイントを書いていきます。
とはいえ、自分もまだ勉強中なので、最終的には「この爆発かっこいいな」と思う作例を参考にすることをおすすめします。
- フレーム29(※ここではラフのときのフレーム番号を使っていますが、完成時にはタイミングを調整しているため、実際のフレーム番号とはズレています。)
爆発が始まって光が広がるときは、細かいとげのような形を不揃いにして伸ばします。 - フレーム35
もくもくした煙の形を描きます。煙の塊が均一に並んでいると単調に見えてしまうので、塊ごとに大きさや形を変えて、不揃いにします。 - フレーム39
炎の形を見栄えよく整えていきます。- 球が敷き詰められたような形から、塊の大きさや形を不揃いにする。
- 影や輪郭線の強弱を思い切りつけます。
- 円の形に区切りすぎず、隙間を作ります
- 輪郭をギザギザさせたり、区切りの線を入れたりして、形が細かく分割されているように見せる。
- フレーム47
炎が黒煙に変わっていくときは、部分的に黒い煙が炎を覆っていくように描きます。
いきなり全体を黒くするのではなく、ところどころから黒煙が広がっていくようにすると、炎から煙へ変化している感じを出しやすくなります。 - フレーム41~44など
炎が大きくなるときは、小さな球状の塊が上から下に巻き込まれていくような動きを描くと、炎が膨らんでいく感じが出しやすくなります。

- フレーム65
黒煙に変わった後も、部分的に煙の塊が膨らんでいきます。形を複雑にするときは、炎と同じように、塊の大きさや形を不揃いにします。また、境界を単純にしすぎず、大小の塊を組み合わせながら形を整えていきます。 - フレーム91
風に流されるうすい煙。曲線や直線、ラインの間隔を一様にならないように気を付けます。 - フレーム101
線状に千切れて消失していきます。(ちなみに最初の爆風で舞い上がった煙と、風に流されて消失していくこの煙は、不透明度を下げて、最後は透明にして消していくと自然になります。)
全体的に形が単調にならないように、次のようなことを意識して描いていきます。
- 大小さまざまな塊を組み合わせる。
- 形を左右対称にしない。
- 輪郭や境界を単純にしすぎない。
- 線や隙間の間隔を一様にしない。
ただし、単純に細かく描き込めばよいというわけではありません。
大きな形を保ちながら、ところどころに小さな変化を加えていくことで、全体のシルエットを崩しすぎずに、複雑で見栄えのする形にしやすくなります。
煙の消え方については右の記事でいろいろ紹介しています。
爆発の中にはいろいろな煙の動きが出てくるので、それぞれを描くのが難しい場合は、まず1種類の煙だけを使った小さなアニメーションを作ってみるのがおすすめです。
作画・着色
最終的に以下のようなタイミングと作画になりました。
- フレーム1~24
爆発前の間 - フレーム24
着火 - フレーム27
インパクトフレーム - フレーム28
爆風による煙が出たり、物が吹き飛び始めます。
爆風による煙は28フレームから徐々に不透明度を下げています。 - フレーム29~31
爆風による衝撃波が周囲に広がり始めます - フレーム31~65
局所的な爆発によって、煙が尾を引きながら破片が飛散していきます。 - フレーム28~44くらい
炎が大きくなっていきます。38フレームくらいまでは炎がそのまま大きく広がる。それ以降は、周囲の空気を巻き込みながら、回転するように大きくなっていくイメージ。 - フレーム47
炎が黒煙に変化していきます。 - フレーム65~86くらい
動きが極端に遅くなっていきます。 - フレーム89~
煙が風に流されて、ちぎれて消失していきます。91フレームから不透明度を下げています。

仕上
特殊効果やカメラの揺れをつけています。
- 煙の不透明度を下げて消失させる。
- 炎の色にGlowエフェクトをつけて光らせる。
- カメラに縦横のノイズをつけて画面を揺らす(24~60フレーム)
特にカメラ揺れをつけるとインパクトが簡単に演出できます。最初に(着火のタイミングで)強く揺らして、だんだん揺れをフェードアウトさせていくと自然になります。
今回はこの程度の仕上げにしていますが、爆発の映像表現にはほかにもいろいろな方法があります。
例えば、
- ブラーを使って、爆発や破片の速い動きを強調する。
- 画面の歪みを加えて、熱による空気の揺らぎや衝撃を表現する。
- 画面を一瞬白くする(フラッシュ)などして、爆発の瞬間的な光を強調する。
- 色収差を加えて、強い衝撃や画面の激しい動きを演出する。
- グリッチなどの映像効果を加えて、より激しい印象にする。
このようなエフェクトを組み合わせることで、爆発の光・熱・衝撃・速さなどを、作画だけではなく画面全体の効果として表現することができます。
完成
最初にも表示していましたが、今回作った爆発アニメーションの完成品が右動画です。
今回は、まずラフで爆発のタイミングや動きを決めてから、実際に動かして調整し、最後に炎や煙の形を作り込んでいきました。
爆発は、吹き飛ぶものや衝撃波、煙などの要素を追加していくことで、いろいろなバリエーションを作ることができます。
例えば、吹き飛ばされるものを増やしたり、衝撃波を大きくしたり、爆発を連続させたりするだけでも、かなり印象を変えられると思います。
ただ、実際に作ってみると、爆発はかなり作画コストの高いエフェクトでした。
今回は2Dアニメーションとして手作業で作りましたが、3DCGで使うことを考えると、こうした爆発の動きをジオメトリノードなどでプロシージャルに作れないかというのも気になりました。
今後は、今回の作画で考えた「爆発のタイミング」や「形の変化」を参考にしながら、3DCGでも爆発を作れる方法を試してみたいと思います。
関連記事
2Dエフェクトやアニメーションの考え方などの記事を紹介したガイド記事です。
グリースペンシルに関する記事をまとめたガイド記事です。

















コメント